証券取引等監視委員会証券取引特別調査官

 

 最近は証券取引の手段がそれはそれは多くなりまして、やれオプションだスワップだ先物がどうのこうの…。私の頭では到底着いて行けましぇん。(^^;//私が着いて行けないなら警察もそうだ…と言うつもりは到底ないんですけれども、実際どうなんでしょうね。

 先にも書きましたように、現在の証券取引は門外漢にとってはまさに複雑怪奇、何がどうなってどこからどうお金が転がり出て来てるのか、まるで訳分からず。それ故に、違反行為の取締には専門知識が求められる訳です。その専門知識を持っているのは、すなわち証券取引等監視委員会の事務局職員。同委員会は内閣府外局たる金融庁のそのまた附属機関、とは言っても金融庁の下部機関という訳でもない…ということなんだそうですが、まあ細かいことは置いときまして。(実はよく理解してないらしい・苦笑)

 平成4年の証券取引法の改正で、新たに証券取引等監視委員会職員による証券取引法違反事件の調査摘発に関する条項が設けられました。証券取引等監視委員会は準司法的な役割を負った委員会であり、その事務当局には監視・取締の権限が与えられていました。この度、彼らには新たに強制調査の権限も与えられたのです。強制的な捜査・調査を行う機関は多々ありますが、その中でも最も新しい機関です。

 証取委の事務局には特別調査課というセクションがあり、犯則調査はここが担当します。特別調査課には、上席証券取引特別調査官2名以内、証券取引特別調査官186名以内を置く事とされています。この特別調査官が、実際の犯則調査に当たる人員です。

 さらに。組織が小粒な証取委には地方支分部局がありません。犯則事件はなにも東京だけで起こるとは限りませんから、これはちょっと痛いですね。そこで、財務省の地方支分部局たる財務局・財務支局の職員を助っ人として使ってヨイ、という規定が作られました。具体的には、「財務局又は財務支局の職員のうち、犯則事件の調査を担当する者として、財務局長又は財務支局長が委員会の承認を得て指定した者」を、「委員会が財務局長又は財務支局長を指揮監督する」事を通して、犯則調査に動員します。ですが必要ある時は、委員会はこれら指定職員を直接指揮監督して犯則調査に当たってもよろしいとなっております。

 でもここで、証取委の規模がもっと大きくて地方支分部局があれば外部の助っ人を頼る必要はない訳で…。証取委側からして見れば、これは手助けになる一方ちょっと歯がゆい規定になるのでしょうか。実際の態勢としては、関東・東海・近畿の財務局に証券取引特別調査官が配置され、証取委と協力して犯則調査に当たっています。ちょうど、東京・名古屋・大阪証券取引所に対応して置いてある形です。

 証取委事務局・財務局に配置された特別調査官の細かい人数は分かりませんが、法定上限の186人をかなり下回っている事は確かなようです。平成14年3月末現在、証取委事務局の職員総数は182人、この内特別調査課の職員は62人です。全員が特別調査官とは限らないので、調査官の人数はこれよりもう少し少なくなります。また財務局については、関東・東海・近畿財務局の証券取引等監視部門の職員総数が、同じく平成14年3月末で182人となっていますけれども、この数字の半数は審査・検査を担当する職員で占められているようです。証券取引特別調査官の人数は半分ないしそれ以下、という事になります。委員会と財務局合わせても調査官は150人いるかな、というくらいで、小規模といえば小規模。

 彼らが調査する犯則事件は、証券取引法違反の中でも特に政令で取り上げたものになります。さすがに、違法行為の中でもとりわけ専門的知識を要する事案が選ばれているらしく、モノの本などには「通常の刑事事件と同様に捜査当局による事案の解明で足りる行為は対象とはなっていない」なんて書いてあります。ごもっともとは言え、しかし警察もまあナメられたもの? いやはや。

 政令に挙げられた違反行為をはたらいた者は犯則調査の対象になるんですが、この対象は、何も証券会社だけがターゲットな訳ではありません。平成8年だか9年だかの一頃、バブル後の不良債権問題がらみで証券会社に何かと当局の手が入ったのでそう考えそうにもなりますが、たとい個人であっても違法行為に及べば当然調査の対象になります。さらに言えば、証券会社は免許制の会社な上に免許にからんで検査も入る、むしろこれまで野放しに近かった一般個人投資家の方がターゲットだ、なんて声もあります。ま、悪いやつはどこにでもいるものですからね。

 こういった犯則事件を強制調査するに当たっての権限は、先に挙げた国税査察官による国税犯則取締法に基づく査察だとか、税関職員による関税法に基づく強制調査とか、それと同じような内容です。すなわち、裁判所の許可を得て臨検・捜索・差押えができます、でも逮捕拘禁はできません、調査の結果犯則事実がはっきりすれば検察官に告発、というやつ。でも税金取立が主目的の脱税摘発と違い、こちらの主目的は違反者自身の刑事告発にあるんだから、いっそ「捜査」にしちゃった方がすっきりするんじゃないのかという気もします。まあ、個人的な感想ですけど。

 特別調査官の犯則調査の結果告発に至った件数については、若干古いですが、平成8年度には5件、9年度には7件、10年度には6件あったそうです。この内、14件は委員会が調査し告発した事件ですが、残る4件は関東財務局の特別調査官が調査を行い、その結果にもとづいて委員会が告発した事件です。東海と近畿の財務局についてはまだ単独調査の事例がないようですが、委員会が財務局を拠点に名古屋や大阪の証券取引所での事件を調査する際には、局の調査官も主要な役割を果している…との事です。

 
主要参考資料;
『註解 証券取引法』 監修;神田秀樹 編;野村証券株式会社法務部・川村和夫 刊;有斐閣 1997

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