取締船写真コーナー


 水産庁は、全国6つの漁業調整事務所に、自前の取締船を合計6隻配備しています。取締船の写真というのは船専門の雑誌でもあまり頻繁にお目にかかれるものではない、それなりに珍しいものだと思われます。ここで、実は私取締船の写真を撮ったことがあります。ので、取締船紹介を兼ねて、ここでその一部を公開することとしましょう。(とかなんとか言いつつ、要するに自慢したいらしい。どうもすんません・自爆)

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 99年夏、博多埠頭イベントバースにて撮影した水産庁取締船「白竜丸」です。排水量1296総トン、全長78.1メートル、主機はディーゼル2基で出力6000馬力になります。遠洋国際の航海資格を持った船であり、主に200カイリ水域外での取締り活動に従事している船舶です。本庁漁政部に所属しており、定係港は東京です。
 東京を根城にして外洋での取締り活動に従事する、という事ですので、福岡ではあまりお目にかかれない船です。この時博多港に寄港した理由はよく分かりませんが、理由はともかく珍しい船がいるねえという事で。ぱちっと撮って参りました。ちなみに、寄港しているのを知ったのは「偶然」です。「たまたま」港に寄ったら珍しい船がいた、「たまたま」その時カメラを持っていた。ううん、運がよろし。(笑)
 
 
 同船を後方より撮影。船の後半部分にスペースを広く取ってあるのが分かります。取締り活動に便宜をはかっての事でしょう。後でも述べますが、実際後半の空いたスペースにはゴムボートと揚降用クレーンが積んでありました。取締り用のものでしょうね。
 またボートといえば。煙突脇に吊ってあるゴムボートですが、雑誌などで見かける写真では、ここに吊ってあるのは本来オレンジ色に塗られた救命艇であったようです。しかし、写真では見ての通り(お分かり頂けますか)黄色いゴムボートに変わっています。これも、おそらくは取締りに便宜をはかっての事なのでしょう。
 
 
 白竜丸は取締船なるにより、随所に「それらしい」装備が施してあります。それを逐一解説していくのも楽しいんですが、手間や写真張り付ける事によるページの重さの問題などもありますので…今回は2点だけ。その1は、前甲板のマスト上にある暗視装置(だったはず・苦笑)です。取締活動は当然夜間にも実施されるものですので、暗闇を見通す暗視装置は重要といえましょう。
 この他船の前方にある取締り関連装備としては、マストの基部に放水銃、船橋構造物の最上部に大型のサーチライトが装備されています。放水銃は消火、サーチライトは照明に用いるのがそもそもですが、取締りや立ち入り検査への抵抗に対し、威嚇として使う場合もあるとか。なるほど。(^^;
 
 
 目を後部に移しまして。後部の空きスペースに搭載してある取締用ゴムボート、及びその揚降用クレーン装置です。手前に見える黒いボートの他、その奥にもう1隻、白いボートが積んであります。煙突左脇の黄色いものも合わせると、合計3隻積んである計算になります。ちなみに煙突右脇にもボートの吊り下げ装置がありまして、そこへの搭載は確認できていないんですが、もしここにもゴムボートを積んだとすると4隻になりますね。それにしてもまあ、ずいぶんと積み込むものです。
 どうやら水産庁は取り回しが効くゴムボートがお好きなようで、他の取締船にもたくさんのゴムボートを積んでいます。それというのも水産庁の取締船は、長期間洋上で持続的に行動する能力を重視した結果か、なべて速力が遅くなっています。そのため、小回りの効く漁船相手に機動的な取締りを展開するには、どうしても小型艇を多く積んでおく必要があるらしい。
 
 
 取締船のファンネルマークです。一目して分かる通り、赤地に青で「水」の字をかたどったマークを描きます。取締船にせよ調査船にせよ、水産庁が自前で持っている船には必ずこのマークが付きます。また、後部マストの上で翻る水産庁旗のデザインもこれでした。
 まあ、分かりやすくて、そこそこいいデザインなんではないんですか。
 
 
 こちら。00年頭に須崎埠頭長浜船溜にて撮影した、水産庁の取締船です。向かって左手の船が「白鴎丸」、福岡にある九州漁業調整事務所に所属する取締船です。右側の船は「白嶺丸」、東京を定係港とする本庁漁政部所属の取締船です。ごちゃっとした分かりにくい写真で、どうもすいません。(苦笑)
 2隻とも「499トン型」と呼ばれる取締船で、主に200カイリ水域内での取締活動に従事します。とはいえ、同じ499トン型でも白嶺丸は1993年建造のタイプシップ、白鴎丸は1998年建造の最新鋭船(00年3月現在)という違いがありまして、双方比べてみると細かいところがいろいろ変わっているそうな。たとえば、白嶺丸は主機として舶用ディーゼル2基を積んでいるのに、白鴎丸は1基だけだとか。(でも総出力は4000馬力で同じ、航海速力も15ノット強で同じ、です。)
 本庁の船がわざわざ福岡くんだり(苦笑)まで出張ってきているはっきりした理由は分かりません。が、この時期は丁度日中漁業交渉が行き詰まり、中国漁船対策が大変だったころですから… おおむね、そこらと関係があるんでしょうね。いや、ご苦労様です。
 
 
 499トン型取締船のすっきりした映像はこちら。01年頭に、博多ふ頭イベントバースにて撮影した取締船「白萩丸」の写真です。
 本船は本庁漁政部に所属し東京を定係港とする取締船であり、白嶺丸をタイプシップとする499トン型の2番船に当たります。要目を簡単に挙げると、排水量499総トン、全長63.4メートル、機関はディーゼル1基で出力4000馬力になります。
 御覧のように乾舷は低く、船橋構造物もコンパクトにまとまっています。なかなかスマートではありますが、しかし洋上での長期行動能力を第一目的として建造された船であるため、見掛けほど偉駄天という訳ではありません。
 
 
 同船を正面から撮影した写真です。同じ白色の船が向こう側の岸壁にいるので、いまいち分かりづらい写真になってしまいましたが…まあとりあえず。
 ここ博多ふ頭イベントバースでは、以前にも、上にある「白龍丸」の写真を撮ったことがあります。ので、同じようなアングルで写真を撮ってみました。どうでしょう。背景の船(白龍丸の写真にも、同じ「かめりあ」という船が映っています)や、舷門のところにある自転車などから、船の大きさを感じ取ってもらえますでしょうか。正直な話、さほど大きな船ではありません。
 
 
 同船の船橋付近のアップ写真です。取締船ならではの装備として、まず船首マスト基部に小型の放水銃が装備してあります(白塗りのとてもコンパクトなやつです…分かりますか?)が、これはリモコン操作式のものです。用途は既記の通り。
 船橋上には探照灯が2基、カメラが2種類装備してあります。写真では残念なことに、探照灯もカメラも、はっきり映っているのは1基だけになっています。すぐ上の正面からの写真の方が、むしろはっきり確認できるでしょうか? 2種類あるカメラは夜間取締に用いる暗視装置で、高感度型と赤外線型の暗視カメラを1基ずつ装備しています。探照灯の用途は、やはり既記の通りです。
 
 
 こちらは00年夏、中央埠頭にて撮影した取締船「東光丸」です。排水量2070総トン、全長86.9メートル、機関はディーゼル2基で出力8000馬力を絞り出します。本庁漁政部に所属し東京を定係港としており、水産庁取締船隊の中では最大(撮影時現在)の船です。前出「白竜丸」と同じく本船も200カイリ水域外での取締りを担当しており、航海資格はもちろん「遠洋・国際」。南へ北へ走り回る取締船な訳ですね。
 これも、本来なら福岡ではなかなかお目にかかれない船です。が、この時期水産庁は発効したばかりの日中新漁業協定の実施徹底のため、博多を拠点港として集中的取締り活動に乗り出していました。このため本船も福岡にやって来たのでありました。ありがたく撮影させていただきまする。(笑)
 
 
 後方より撮影した「東光丸」。こうして見ると、純白の船体が実にきれいです。
 本船はいわゆる乾舷が高く、岸壁の端から甲板上をのぞき込むというまねができません。なので、あれがあったこれが見えたとあまりあれこれ言うことはできないのですけど…まあ、少しだけ。船後部の空きスペースですが、ここにはクレーンがあり、(写真では見えませんが)取締用ゴムボートが積んであるようです。本船の航海速度は18ノット(キロ換算で時速33かそこら…)と、他の取締船同様漁船を追いかけ回すにはいささか鈍足なので、足が速くて小回りも効く「手足」は必須ということなのでしょう。
 また空きスペースの前方、後部マストの両脇にそそり立っている太い「柱」は、減揺タンク(のはず・苦笑)といって、その名の通り船の揺れを抑えるための装備です。本船は太平洋・大西洋・インド洋のみならず、荒天厳しい高緯度海域までも出張る船なので、特別にこのような装備もなされているようです。業務の苛酷さをじわりとにじませる一品。
 
 
 船体中央部、船橋構造物と煙突のアップです。でかでかと書かれた「FISHERIES INSPECTION」(漁業監督)の字はいやでも目に入り、さすがに目立ちます。こうした書き込みは国際性を感じさせ、いかにも母国を遠く離れた外洋での取締活動に従事する船らしいですね。
 
 
 「東光丸」紹介の最後に、取締機材の写真を1点だけ挙げましょう。船首部、前部マスト基部付近にある放水銃のアップです。放水銃は船舶火災の消火に用いるもの…でありますが、「白竜丸」の項でも述べた通り、最近では取締への抵抗を鎮圧する目的で放水を行うことも珍しくはないようです。一部の例外を除き、漁業監督官を含む特別司法警察職員というのは概して荒事が苦手と見えるのですが、それでも取締という活動の性格上、少々の荒事は避けられないということなのでしょう。いや、なかなか大変ですね。
 

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