個人的公選法メモ

back to home.
 

 私、国政選挙に際して各政党が発表した政策を引き合いにちょこちょこ駄文を書いたりしている(例えば「治安を守るのはどの政党?〜平成17年衆議院議員選挙〜」とか)関係上、時々政党や候補者に質問をすることがあります。といっても、面と向かって質問したり電話で聞いたりする度胸はないので、電子メール出すだけなんですけどね。;-P

 以前はそこそこ返事がもらえていたこのメール質問ですが、困った事に最近、さっぱり返事が来なくなりました。以前であればこちらが驚くほどの早さで返事をよこしてくれていた革新系の候補も、今ではなべてだんまり。まあ、私のようなプーの木端有権者からの質問なんて、うっとおしくて一々答えてられるかよ!ってとこなんでしょうけれど……。ところで、ふと思った事が一つ。

 「そういえば、Internetを選挙に利用する事は厳しく制限されていると聞くけれど、候補者や政党にメールを出して質問をしたり、それに答えたりする事は、公職選挙法上どういう扱いになるのだろうか?」

 ここで、もし、選挙に関して質問メールを出す事あるいはメールに答える事が公職選挙法上違法であるならば、当然向こう側はだんまりを決め込む訳です。でもって、私は知らず知らずの内にとはいえ違法行為をはたらいていたという事に。:-P

 治安ヲタクがこんな事では話にならない。これは、きっちり確かめてみなければなりますまい。という訳で軽く調べてみましたその成果を、折角だからWeb Pageの形式にまとめて載せとこうというのが今回の駄文の主旨です。メモ代わり、と言うよりはむしろ字数稼ぎの性格濃厚なのですけれども、そこは笑って見過ごして頂きたく。;-)

 また本来なら、公職選挙法におけるInternetの位置付け・利用のあり方の全体像をまず描き出してから個別の問題点へと進んで行くべきですが、とても面倒臭くてそんな事やってられません。いきなり各論めいた話大爆発になってしまうところも、どうかお許し下さい。

● 選挙期間中に有権者が候補者/政党に質問メールを送る

 公職選挙法上、電子メールは、「文書図画」に準ずる扱いを受けています。まずは、その「文書図画」の取扱について定めた公職選挙法の規定を軽く列挙してみます。

公職選挙法第142条

 衆議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号に規定する通常葉書及び第一号から第二号までに規定するビラのほかは、頒布することができない。この場合において、ビラについては、散布することができない。
(中略)
 前項の規定にかかわらず、衆議院(小選挙区選出)議員の選挙においては、候補者届出政党は、その届け出た候補者に係る選挙区を包括する都道府県ごとに、二万枚に当該都道府県における当該候補者届出政党の届出候補者の数を乗じて得た数以内の通常葉書及び四万枚に当該都道府県における当該候補者届出政党の届出候補者の数を乗じて得た数のビラを、選挙運動のために頒布(散布を除く。)することができる。ただし、ビラについては、その届け出た候補者に係る選挙区ごとに四万枚以内で頒布するほかは、頒布することができない。
 衆議院(比例代表選出)議員の選挙においては、衆議院名簿届出政党等は、その届け出た衆議院名簿に係る選挙区ごとに、中央選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラを、選挙運動のために頒布(散布を除く。)することができる。
 衆議院(比例代表選出)議員の選挙においては、選挙運動のために使用する文書図画は、前項の規定により衆議院名簿届出政党等が頒布することができるビラのほかは、頒布することができない。
(中略)
11 選挙運動のために使用する回覧板その他の文書図画又は看板(プラカードを含む。以下同じ。)の類を多数の者に回覧させることは、第一項から第四項までの頒布とみなす。ただし、第百四十三条第一項第二号に規定するものを同号に規定する自動車又は船舶に取り付けたままで回覧させること、及び公職の候補者(衆議院比例代表選出議員の選挙における候補者で当該選挙と同時に行われる衆議院小選挙区選出議員の選挙における候補者である者以外のものを除く。)が同項第三号に規定するものを着用したままで回覧することは、この限りでない。
12 衆議院議員の総選挙については、衆議院の解散に関し、公職の候補者又は公職の候補者になろうとする者(公職にある者を含む)の氏名又はこれらの者の氏名が類推されるような事項を表示して、郵便等又は電報により、選挙人にあいさつする行為は、第一項の禁止行為に該当するものとみなす。

公職選挙法第142条の2

 前条第一項及び第四項の規定にかかわらず、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙においては、候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等は、当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等の本部において直接発行するパンフレット又は書籍で国政に関する重要政策及びこれを実現するための基本的な方策等を記載したもの又はこれらの要旨等を記載したものとして総務大臣に届け出たそれぞれ一種類のパンフレット又は書籍を、選挙運動のために頒布(散布は除く。)することができる。
 前項のパンフレット又は書籍は、次に掲げる方法によらなければ、頒布することができない。
一 当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等の選挙事務所内、政党演説会若しくは政党等演説会の会場内又は該当演説の場所における頒布
二 当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等に所属する者(参議院名簿登録者を含む。次項において同じ。)である当該衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙における公職の候補者の選挙事務所内、個人演説会の会場内又は該当演説の場所における頒布
 第一項のパンフレット又は書籍には、当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等に所属する者である当該衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙における公職の候補者(当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等の代表者を除く。)の氏名又はその氏名が類推されるような事項を記載することができない。
(以降略)

公職選挙法第143条

 選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号いずれかに該当するもの(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては、第一号、第二号、第四号及び第五号に該当するものであつて衆議院名簿届出政党等が使用するもの)のほかは、掲示することができない。
一 選挙事務所を表示するために、その場所において使用するポスター、立札、ちようちん及び看板の類
二 第百四十一条の規定により選挙運動のために使用される自動車又は船舶に取り付けて使用するポスター、立札、ちようちん及び看板の類
三 公職の候補者が使用するたすき、胸章及び腕章の類
四 演説会場においてその演説会の開催中使用するポスター、立札、ちようちん及び看板の類
四の二 個人演説会告知用告知用ポスター(衆議院小選挙区選出議員、参議院選挙区選出議員又は都道府県知事の選挙の場合に限る。)
五 前各号に掲げるものを除くほか、選挙運動のために使用するポスター(参議院比例代表選出議員の選挙にあつては、公職の候補者たる参議院名簿登録者が使用するものに限る。)
 選挙運動のために、アドバルーン、ネオン・サイン又は電光による表示、スライドその他の方法による映写等の類を掲示する行為は、前項の禁止行為に該当するものとみなす。
(以降略)

公職選挙法第146条

 何人も、選挙運動の期間中は、著述、演芸等の広告その他いかなる名義をもつてするを問わず、第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為として、公職の候補者の氏名若しくはシンボル・マーク、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者を推薦し、支持し若しくは反対する者の名を表示する文書図画を頒布し又は掲示することができない。
 前項の規定の適用については、選挙運動の期間中、公職の候補者の氏名、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者の推薦届出者その他選挙運動に従事する者若しくは公職の候補者と同一戸籍内に在る者の氏名を表示した年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状その他これに類する挨拶状を当該公職の候補者の選挙区(選挙区がないときはその区域)内に頒布し又は掲示する行為は、第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為とみなす。

 ざっとこのくらい。一応、同法201条の5以下に定める「政党その他の政治団体等の選挙における政治活動」関係の条文中にも文書図画の扱いについて定めた項目があるのですが、政党や政治団体に属しない一般有権者がメールを送る分には関係ないため、ここでは省略します。また、細かい例外として報道期間による報道・評論の自由に関する規定がありますが、これは一般有権者がメールを送る行為とは関係ないため、省きます。あと選挙公報の発行と配布に関する規定も除きました。

 上記4つの条文を改めて見てみると、要点は次のとおりです。すなわち、

  • 選挙運動のための文書図画は、所定の通常葉書あるいはビラもしくはパンフレット・書籍のほかは、頒布することはできない。
  • 選挙運動のためのビラもしくはパンフレット・書籍は、散布することはできない。
  • 選挙運動用の回覧板その他文書図画又は看板を多数の者に回覧させることは、文書図画の頒布とみなす。
  • 衆議院の総選挙の際、候補者又は候補者となろうとする者が郵便等又は電報により選挙人にあいさつする行為は、文書図画の頒布もしくは散布とみなす。
  • 選挙運動のための文書図画は、所定のポスター、立札、ちょうちん及び看板の類のほかは、掲示することはできない。
  • 選挙運動のためにアドバルーン、ネオンサイン又は電光による表示、映写等の類を掲示する行為は、文書図画の掲示とみなす。
  • 選挙運動の期間中は、何人であっても、名義のいかんを問わず、候補者の氏名もしくはシンボルマーク、政党その他政治団体の名称、候補者を推薦・支持もしくは反対する者の名を表示する文書図画を頒布・掲示することはできない。
  • 選挙運動の期間中に、候補者の氏名、政党その他政治団体の名称、候補者の推薦届出者、その他選挙運動従事者、もしくは候補者と同一戸籍内にある者の氏名を表示した年賀状その他の挨拶状を選挙区内に頒布・掲示する行為は、文書図画の頒布・掲示とみなす。

 「所定の通常葉書あるいはビラもしくはパンフレット・書籍ならば、選挙運動のための文書図画として頒布することができる」「所定のポスター、立札、ちょうちん及び看板の類ならば、選挙運動のための文書図画として掲示することができる」。こういう事です。この他の文書図画を選挙運動のために頒布、掲示、散布することは、一切禁止されています。ここにおいて、電子メールは、文書図画に当たりますが、所定の通常葉書でもビラでもパンフレットでも書籍でもなく、所定のポスターや立札やちょうちん・看板の類でもありません。ということは、選挙運動のためには頒布も掲示も散布もできず、また選挙運動のためではなくとも、候補者の氏名やシンボルマーク、政党名などが書き込まれておれば、やはり頒布も掲示も散布もできないということになります。

 質問メールである以上、候補者の氏名やら政党名やらが文中にあるのは当然で、従って選挙運動のためか否かを問わず、これを頒布・掲示・散布することはできません。問題は、このような質問メールを、有権者が候補者あるいは政党にあてて送る行為が、文書図画の頒布掲示もしくは散布に当たるか否か。当たるとなれば、それは違法です。

 文書図画を広くばらまく「散布」は論外として、残る「頒布」と「掲示」。公職選挙法にいう文書図画の頒布とは、文書図画の掲示とは、一体どのような行為を指すのであるか。モノの本によると、それぞれ次のような行為であるとされています。

  • 文書図画の頒布:文書図画を不特定又は多数人に配布する目的で、一人以上の者に配布すること。実際に不特定又は多数を相手に配布するだけでなく、相手が特定少数であっても(たとえ一人であったとしても)、その特定少数の者を通じて当然又は成行き上不特定又は多数の者に配布されるような情況のもとで文書図画を当該特定少数の者に配布するのであれば、それも頒布に当たる。また、文書図画を置いて、自由に持ち帰らせる事を期待するような行為も頒布に当たる。
  • 文書図画の掲示:文書図画を一定の場所に掲げ、人に見えるようにすることのすべてを指す。掲示物はポスターや看板、ちょうちん等に限らず、アドバルーン、ネオンサイン又は電光表示、スライドその他映写の類から壁等に書かれた文字、路面等に書かれた文字まですべて含む。従って、文書図画を壁や塀等に貼布し、取り付け、あるいは立てかけることはもちろん、壁等に直接文字ないし絵画等を記入し、人目に触れるようにする場合も文書図画の掲示に含まれる。

 ちょっと余談ながら、Internetを用いた選挙運動の規制で今のところ最も話題となっているのはWeb Pageの取扱だ、と思っているのですけれども、上記の規準にあてはめると、

  • 不特定又は多数人が見る事を期待してWeb Pageを開設することは、文書図画の頒布
  • モニターなりディスプレイなりに表示されたWeb Pageの文字等を一定の場所に掲げて人に見えるようにすること(例えば、そのモニターなりディスプレイなり自体を一定の場所に掲げるとか)は、文書図画の掲示

になるそうです。

 で、この頒布あるいは掲示に当たるか否かという点。実はモノの本を見ると、「特定少数に送信する選挙運動のための電子メールは、選挙運動期間中は許され、事前運動の場合は禁止される」と書かれており、ここから、特定少数相手に送信するのであれば質問メールを送る事はまるで問題ない!…と結論付けたくなってしまうのですが、しかるに話はそう簡単には済まない。

 ここで一点考えておくべき事があります。上記の結論は、特定少数相手にメールを送信するに当たり、その特定少数の者を通じて当然又は成行き上不特定又は多数の者に配布されるような情況「にはない」事が前提となっています。もし、この前提が成り立たないのであれば、たとい特定少数相手のメール送信であっても文書図画の頒布に当たり、違法となります。

 とすると次に問題となるのは、候補者あるいは政党(の担当者)にあてて出す質問メールは、その候補者個人あるいは政党の担当者を通じて、「当然又は成行き上不特定又は多数人に配布される」モノであるか。そういう状況に晒されるモノであるか。

 残念ながら確たる答えは出せないのですが、私は否といいたい。候補者宛のメールであれば候補者の見識を問うているのであり、当人が見て返事を出せばいいだけの話。もしかすると、自分独りで結論を出さずにブレーンや側近に相談するかもしれないけれど、それくらいなら「不特定又は多数人」とまでは言えないのではないか。政党宛に出す場合も同様で、まずは広報の担当者が見、そこから場合によってはしかるべき政策担当者に転送されたりするだろうけれど、それくらいなら「不特定多数又は多数人」とまでは言えないのではないか。

 ……けれど実際のところ、送付先で一体どれほどの転送や回覧がなされるのか定かでなく、ごく少数の人しか見ないだろう、と当然のごとく期待していいのかどうか分かりません(1人2人ならいいけど、わらわら集まって見る、なんて事になると…)。また、そもそも問題となる「不特定又は多数人」「特定少数」というのが具体的にはどれほどの人数、集団を指すのか、分かりません(3、4人見たらもう「不特定」なんて言われた日には……)。従って、明確に「頒布には当たらない」と言い切るだけの自信がありません。無念。

 個人的には、頒布には当たらないものと、考えます。

 なお、頒布と並び禁止行為となっている掲示については、あまり心配する必要はないみたい。これは、送ったメールが人目に触れるように「一定の場所に掲げる」、そういう事をしなければいいということになります。送ったメールを人に見せびらかしたり、人目に触れるモニターなどにわざと表示させたり、そういうことをしなければいい。

 ただ一点不安なのは、電子メールを送るという事は、当然、送り先のパソコンのモニター類に表示させる事を前提として送っている訳であり、そこが引っかかるのではないかというところです。「送り先のパソコンのモニター類に表示させる」事をもって「掲示」と取られる余地があるかないか。……まあ、モニター類に表示させるといっても、おおっぴらに人目につくモニターに表示させるのではなく、候補者個人ないし担当者個人だけが見る(であろう)モニター類に表示させる事が期待できるので、大丈夫なんじゃないかと思うんだけど……

 結論部で急に自信のない記述になってしまいましたが、改めて書きますと。「個人的には」、候補者や政党等に向けて質問メールを出す行為は文書図画の頒布にも掲示にも当たらず、従って問題ないんじゃないかと、そう考えております。:-)

● 選挙期間中に候補者/政党が有権者からの質問メールに同じくメールで答える

 上で立てた設問の逆パターンです。まずは、関連する条文をざっとおさらい。

公職選挙法第142条、第142条の2、第143条、146条

内容省略

公職選挙法第201条の5

 政党その他の政治活動を行う団体は、別段の定めがある場合を除き、その政治活動のうち、政談演説会及び街頭政談演説の開催、ポスターの掲示、立札及び看板の類(政党その他の政治団体の本部又は支部の事務所において掲示するものを除く。以下同じ。)の掲示並びにビラ(これに類する文書図画を含む。以下同じ。)の頒布(これらの掲示又は頒布には、それぞれポスター、立札若しくは看板の類又はビラで、政党その他の政治活動を行う団体のシンボル・マークを表示するものの掲示又は頒布を含む。以下同じ。)並びに宣伝告知(政党その他の政治活動を行う団体の発行する新聞紙、雑誌、書籍及びパンフレットの普及宣伝を含む。以下同じ。)のための自動車、船舶及び拡声機の使用については、衆議院議員の総選挙の期日の公示の日から選挙の当日までの間に限り、これをすることができない。

公職選挙法第201条の6

 政党その他の政治活動を行う団体は、その政治活動のうち、政談演説会及び街頭政談演説の開催、ポスターの掲示、立札及び看板の類の掲示並びにビラの頒布並びに宣伝告知のための自動車及び拡声機の使用については、参議院議員の通常選挙の期日の公示の日から選挙の期日までの間に限り、これをすることができない。ただし、参議院名簿届出政党等であり又は当該選挙において全国を通じて十人以上の所属候補者を有する政党その他の政治団体が、次の各号に掲げる政治活動等につき、その選挙の期日の公示の日から選挙の期日の前日までの間、当該各号の規定によりする場合は、この限りでない。
(中略)
四 ポスターの掲示については、長さ八十五センチメートル、幅六十センチメートル以内のもの七万枚以内、(後半略)
五 立札及び看板の類の掲示については
イ その開催する政談演説会の告知のために使用するもの(中略)及びその会場内で使用するもの
ロ 第三号の規定により使用する自動車に取り付けて使用するもの
六 ビラの頒布(散布を除く。)については、総務大臣に届け出たもの三種類以内
 前項第四号のポスター及び同項第六号のビラは、第百四十二条及び第百四十三条の規定にかかわらず、当該参議院名簿届出政党等又は所属候補者の選挙運動のために使用することができる。ただし、当該選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)の特定の候補者の氏名又はその氏名が類推されるような事項を記載したものを使用することはできない。

公職選挙法第201条の8

 政党その他の政治活動を行う団体は、その政治活動のうち、政談演説会及び街頭政談演説の開催、ポスターの掲示、立札及び看板の類の掲示並びにビラの頒布並びに宣伝告知のための自動車及び拡声機の使用については、都道府県の議会の議員又は指定都市の議会の議員の一般選挙の行われる区域においてその選挙の期日の公示の日から選挙の当日までの間に限り、これをすることができない。ただし、選挙の行われる区域を通じて三人以上の所属候補者を有する政党その他の政治団体が、次の各号に掲げる政治活動等につき、その選挙の期日の公示の日から選挙の期日の前日までの間、当該各号の規定によりする場合は、この限りでない。
(中略)
四 ポスターの掲示については、一選挙区ごとに、長さ八十五センチメートル、幅六十センチメートル以内のもの百枚以内、(後半略)
五 立札及び看板の類の掲示については
イ その開催する政談演説会の告知のために使用するもの(中略)及びその会場内で使用するもの
ロ 第三号の規定により使用する自動車に取り付けて使用するもの
六 ビラの頒布(散布を除く。)については、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出たもの二種類以内
 第二百一条の六第二項の規定は前項第四号のポスター及び同項第六号のビラについて、(途中省略)準用する。(以降略)

公職選挙法第201条の9

 政党その他の政治活動を行う団体は、その政治活動のうち、政談演説会及び街頭政談演説の開催、ポスターの掲示、立札及び看板の類の掲示並びにビラの頒布並びに宣伝告知のための自動車及び拡声機の使用については、都道府県知事又は市長の選挙の行われる区域においてその選挙の期日の公示の日から選挙の当日までの間に限り、これをすることができない。ただし、政党その他の政治団体で所属候補者又は支援候補者(中略)を有するものが、次の各号に掲げる政治活動等につき、その選挙の期日の公示の日から選挙の期日の前日までの間、当該各号の規定によりする場合は、この限りでない。
(中略)
四 ポスターの掲示については、都道府県知事の選挙にあつては衆議院(小選挙区選出)議員の一選挙区ごとに、長さ八十五センチメートル、幅六十センチメートル以内のもの五百枚以内、市長の選挙にあつては当該選挙の行われる区域につき、長さ八十五センチメートル、幅六十センチメートル以内のもの千枚以内
五 立札及び看板の類の掲示については
イ その開催する政談演説会の告知のために使用するもの(中略)及びその会場内で使用するもの
ロ 第三号の規定により使用する自動車に取り付けて使用するもの
六 ビラの頒布(散布を除く。)については、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出たもの二種類以内
 第二百一条の六第二項の規定は前項第四号のポスター及び同項第六号のビラについて準用する。(以降略)

公職選挙法第201条の13

 政党その他の政治活動を行う団体は、各選挙につき、その選挙の期日の公示又は告示の日からその選挙の当日までの間に限り、政治活動のため、次の各号に掲げる行為をすることができない。ただし(中略)第三号の文書図画の頒布については、この章の規定による政談演説会の会場においてする場合は、この限りでない。
(中略)
二 いかなる名義をもつてするを問わず、掲示又は頒布する文書図画(新聞紙及び雑誌を除く。)に、当該選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)の特定の候補者の氏名又はその氏名が類推されるような事項を記載すること。
三 国、地方公共団体又は日本郵政公社が所有し又は管理する建物(専ら職員の居住の用に供されているもの及び公営住宅を除く。)において文書図画(新聞紙及び雑誌を除く。)の頒布(郵便等又は新聞折込みの方法による頒布を除く。)をすること。
(以降略)

公職選挙法第201条の15

 政党その他の政治団体の発行する新聞紙及び雑誌については、衆議院議員、参議院議員、都道府県の議員、都道府県知事、指定都市の議会の議員又は市長の選挙の期日の公示又は告示の日からその選挙の当日までの間に限り、第百四十八条第三項の規定(※註.新聞紙、雑誌の報道及び評論等の自由に関する規定)を適用せず、衆議院議員の選挙にあつては候補者届出政党又は衆議院議員名簿届出政党等の本部、衆議院議員の選挙以外の選挙にあつては当該選挙につきこの章の規定により政治活動をすることのできる政党その他政治団体の本部において直接発行し、かつ、通常の方法(機関新聞紙については、政談演説会(衆議院議員の選挙にあつては、政党演説会又は政党等演説会)の会場において頒布する場合を含む。)により頒布する機関新聞紙又は機関雑誌で、総務大臣(都道府県の議会の議員、都道府県知事、指定都市の議会の議員又は市長の選挙については、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会)に届け出たもの各一部に限り、かつ、当該機関新聞紙又は機関雑誌の号外、臨時号、増刊号その他の臨時に発行するものを除き、同条第一項及び二項の規定を準用する。この場合において、同条第二項中「通常の方法(選挙運動の期間中及び選挙の当日において、定期購読者以外の者に対して頒布する新聞紙又は雑誌については、有償でする場合に限る。)」とあるのは、当該機関新聞紙又は機関雑誌で引き続いて発行されている機関が六月に満たないものについては「通常の方法(政談演説会(衆議院議員の選挙にあつては、政党演説会又は政党等演説会)の会場においてする場合に限る。)」と、当該機関新聞紙又は機関雑誌で引き続いて発行されている期間が六月以上のものについては「通常の方法(当該選挙の期日の公示又は告示の日前六月間において平常行われていた方法をいい、その間に行われた臨時又は特別の方法を含まない。)」と読み替えるものとする。
(中略)
 第一項の規定の適用については、当該機関新聞紙又は機関雑誌の号外、臨時号、増刊号その他の臨時に発行するもので当該選挙に関する報道及び評論を掲載していないものについても、当該選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)の特定の候補者の氏名又はその氏名が類推されるような事項が記載されているときは、当該選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)内においては、同項に規定する当該機関新聞紙又は機関雑誌の号外、臨時号、増刊号その他臨時に発行するものとみなす。

 選挙運動というカテゴリーに加えて、政党等が行う「政治運動」というカテゴリーも加わってきて、ちょっと繁雑になっております。選挙運動における文書図画の扱いについては既に触れたので、ここでは政党等が行う政治運動における文書図画の扱いについて。(※個人が行う政治運動については、触れません。)

  • 所定のポスター、立札又は看板の類の他は、掲示することができない。
  • 所定のビラの他は、頒布することができない。
  • ビラは、散布することができない。
  • いかなる名義をもってするを問わず、特定の候補者の氏名又は氏名が類推される事項が記載された文書図画を掲示又は頒布してはならない。
  • 国、地方公共団体又は日本郵政公社が所有し又は管理する建物において、文書図画を頒布してはならない。ただし、新聞紙・雑誌の頒布、郵便等又は新聞折込みによる頒布、職員専用住宅・公営住宅における頒布、政談演説会の会場における頒布は認める。
  • 機関紙・誌については、総務大臣あるいは所管の選挙管理委員会に届け出た一種類のみ、号外や増刊等を除いた通常号に限って、一般の新聞紙・雑誌と並んで選挙に関する自由な報道、評論を認め、かつ「通常の方法」による頒布と、選挙管理委員会指定の場所における掲示を認める。

 「所定のビラならば政党等の政治運動のための文書図画として頒布できる」「所定のポスター、立札又は看板の類であれば、政党等の政治運動のための文書図画として掲示できる」「所定の機関紙・誌であれば、自由な選挙報道が認められ、通常の方法による頒布と所定の場所での掲示ができる」。この他の文書図画は、選挙の期間中、政治運動のために頒布、掲示、散布することは一切禁止。また政治運動のためでなくとも、候補者の氏名や候補者の氏名を類推できる事項が書き込まれた文書図画は、頒布も掲示も散布もできない。そして、ここに謂う文書図画には、電子メールも含まれる。

 問題となっているのは、やはり、文書図画の頒布であり、掲示であり、また散布であります。文書図画を広くばらまく「散布」は論外として、残る「頒布」と「掲示」。電子メールも公選法上は立派な文書図画ですから、頒布や掲示は認められません。公選法にいう文書図画の頒布・掲示がどのようなものであるかは、既に触れた通りです。

 という訳で、結論も、先の「選挙期間中に有権者が候補者/政党に質問メールを送る」で出したところと似たようなものになります。すなわち、個人ないし特定少数の有権者から届いた質問メールに対し、政党等が同じくメールにて返事を出す行為は、その個人ないし特定少数を通じて当然又は成行き上不特定又は多数の者に行き渡ってしまう情況「にはない」場合に、合法な政治運動として認められる。この情況にあるにもかかわらず返事を出す行為は、文書図画の頒布にあたり違法。なお、文書図画の掲示については、個人ないし特定少数のパソコンに表示されるだけだと期待できるであろうから、たぶん心配しなくていい。

 さてはて、候補者や政党にメールで質問して答えてもらう行為は合法か違法か。とりあえず結論らしきモノを導き出してみました。個人的にはこう思う、とか、大丈夫なんじゃないかと思う、とか、随分弱気かつ曖昧な言葉をつらつら並べる事になってしまいましたけれども、いかがだったでしょうか。勝手解釈の俺様Worldになっちまったという感もないではないですが、そこはまあ、気付いた折にでもびしびし指摘してやって下さい。

 ところで実際のところ、選挙の際に私のようなマネをしてる人って、どのくらいいるもんなんでしょうか。特に国政選挙ともなれば、結構数いるんじゃないかという気がしてるんですが……その人達、ちゃんと返事はもらえているんでしょうか。かくいう私は、最初に書いた通り、最近はさっぱり返事をもらえていません。保守系候補/政党は無論、こういう事に敏感だと思われる革新系からも返事なしとあって、個人的には結構ヘコみます。

 社会の底辺でのたくる木端有権者になんざ構ってらんねェ、ってか? シカトすんなよ! :-P

 
 
主要参照文献;
中山研一『選挙犯罪の諸問題 ─戸別訪問・文書違反罪の検討─ (刑事法研究第1巻)』(成文堂、1985)
選挙制度研究会『実務と研修のためのわかりやすい公職選挙法 (第十一次改訂版)』(株式会社ぎょうせい、2000)
三輪和宏「我が国のインターネット選挙運動 ─その規制と改革─」(『ISSUE BLIEF 調査と情報』517、国立国会図書館、2006)

back to home. inserted by FC2 system