治安を守るのはどの政党?〜平成17年衆議院議員選挙〜

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 一昨年、昨年に続きまして、今年もやって参りました選挙の季節。平成17年9月11日、衆議院議員選挙です。

 さて。今回の選挙は、参議院における郵政民営化関連法案の否決をきっかけとして衆議院が解散したために実施されたものです。唐突に選挙に突入したという感が否めず、選挙公示までの短い期間中にどうにか準備を整えようと、各党かなり苦慮苦心された模様です。私としては、このところ選挙の度に各党の政策集を眺め、治安関係の政策を抜き出してはあれこれ文句を付ける……なんて事をやっている関係上、果してきちんと政策集が発表されるのかどうか気を揉んだものでした。政策集なしとなれば、この企画はぽしゃってしまいますから。

 もっとも、企画といっても、これまでのところ反響の一つもありゃしない、楽しいのは自分だけという自己満足企画なのですが。しかるに、反響こそないものの読んで楽しんでもらえているに違いない、勝手にそう確信しております。(笑)

 かように混乱の気配漂うものだった今回の選挙、実際のところは、主要5政党に限っていえば、公示前にきちんと政策集を作り、公職選挙法に基づく頒布用パンフレット類としての許可も取り付け、それぞれWeb Pageに大きく載せてくれました。そんなん当り前だ……とも言えるでしょうが、ともかくも助かりました。一票を投ずる有権者へのアピールという面はもちろん、個人的な趣味からみましても(!?)、ありがたいものです。

 折角公表された政策集ですから、活用させてもらいましょう。自分の投票に参考とするのは言うまでもなく、当Web Pageの更新にも一役果して頂きます。という事で、「治安を守るのはどの政党?」シリーズ第3回。各政党の治安政策を比較し、ちょっと一言書いてみたいと思います。例によって例のごとく、公職選挙法の規定により投票終了後の公開になってしまうのですけれども、それはそれとしまして。

 まずは、各党の政策集より、治安関係部分を抜粋します。なお、治安政策とは銘打ってない部分の政策にも、直接/間接に治安と関係ありと判断されるものは存在します。それについては、引用者たる私の方で適宜要約を加えた上、抜粋の後に列記する事とします。

○公明党

公明党マニフェスト2005 (抄)

II 日本を変える 公明党 6つの改革!

3.保障します!あなたの安全、暮らしの安全!

公明党の「6つの安全・安心プラン

(2)「空き交番ゼロ作戦」/世界一安全な国、日本へ

・空き交番ゼロ作戦を実現するとともに、警察は犯罪者の検挙など警察にしかできないものに重点を置くことで検挙率の向上をめざします。

・警察官OBや民間警備員を活用した地域や学校等のパトロール体制を強化するとともに、地域のボランティア等による自主的な取り組みを支援し、安全・安心の暮らしを徹底ガードします。地域住民、ボランティア団体が管理・運営する「地域安全安心ステーション」モデル事業を拡充します。

・国際テロの脅威や国内における外国人犯罪の増加に対し、諸外国との連携と協力、出入国管理体制の強化などにより、未然防止を図ります。とりわけ、テロに対しては、不測の事態における対処能力の強化、公共交通機関の教育・訓練を行うほか、緊急医療体制の基盤整備を確立します。

Copyright © 2004 New Komeito. All Rights Reserved.

http://www.komei.or.jp/manifest/policy/manifest2005/01.html より。

    ※以上の他、児童虐待防止政策の一環として児童相談所・学校・病院・警察・ボランティアその他から成る「児童虐待防止市町村ネットワーク」の整備、事件の早期発見に資する「育児支援家庭訪問事業」の整備、虐待被害児童の自立援助施設整備。消費者保護政策の一環として消費者保護法制の整備、消費者団体訴訟制度、インターネットバンキング・盗難通帳にかかわる犯罪対策、預金者保護等。教育政策中の学校安全対策として、学校安全警備員の配置。安全保障政策の一環としてテロに関わるマネーロンダリングへの対策、麻薬取引の水際阻止に向けた海上警備態勢の強化。司法政策の一環として、取り調べ過程記録化・可視化への取り組み、犯罪被害者の刑事手続参加等被害者対策の推進。

 

○社会民主党

Manifesto 衆議院選挙公約 2005 (抄)

 治安関係の項目なし。

© 社会民主党

http://www5.sdp.or.jp/central/topics/44syuin/seisaku/seisaku2005.pdf より。

    ※なお、人権政策の一環として「共謀罪」新設へ反対。女性政策の一環としてドメスティック・バイオレンス対策。公共交通安全政策の一環として航空・鉄道事故調査委員会の権限強化。食品安全政策の一環として環境基準・食品安全基準などの各種基準値の改訂。安全保障政策の一環として自衛隊の縮小。MD導入と武器輸出解禁に反対し、イージス艦・軽空母・空中給油機などは「攻撃的な装備」であるとして保有に反対。また、自衛隊内における人権侵害対策のため「自衛官オンブズマン」制度創設。拉致問題に関する政策として、北朝鮮が拉致問題に誠実に対応することを強く求める、としている。

 

○自由民主党

自民党 政権公約2005 自民党の約束 (抄)

テーマ3:【安心・安全】 誰もが不安なく暮らせる日本へ

かつて世界一安全な国と讃えられた日本を、再び取り戻すために。自民党は長期的な視野に立ち、万全の危機管理体制を整備してきました。今後も、万一の場合への備えをさらに強化して、安心・安全な社会の構築に全力で取り組んでいきます。

あなたを犯罪から守るために。

「犯罪・治安対策」を幅広く実施します。

073.犯罪のない世界一安全な国づくり
20年までに治安の危機的状況から脱却するため、政府をあげて総合的な治安対策を集中的に実施する。

  • 新宿歌舞伎町刷新プランをモデルに安全な街づくりを推進する。
  • 19年までに「空き交番」をゼロに。
  • 新たな手口による詐欺など、身近な犯罪への迅速・適切な対応を行う。
  • 再犯防止のための保護観察機能について、その強化のための関連法を整備する。
  • 覚せい剤など薬物取締りの強化と、薬物乱用防止の普及啓発の推進を行う。
  • 組織犯罪、サイバー犯罪、少年犯罪に対処する関連法整備を推進する。
  • 治安回復の基盤となる治安関係職員の増員、矯正施設の過剰収容の解消など体制の強化を行う。

074.テロの未然防止と対処能力の強化
国際テロから国民を守るため、出入国管理や爆弾テロ対策を強化するとともに、空港や鉄道等の警戒警備を徹底する。また、テロの未然防止のための法整備を進める。

075.出入国管理の厳格化
テロリストや不法外国人を水際で阻止するため、ビザ発給時のオンラインシステム「査証WAN」を拡充し、IC旅券(顔情報)を導入。さらにバイオメトリクス(指紋情報)の開発・導入を行う。

076.不法滞在者の半減
厳正な出入国管理等により、外国人犯罪の温床となっている不法滞在者を20年までに半減させる。

077.「犯罪被害者等基本計画」の策定と実施体制の整備
本年中に、犯罪被害者等基本計画を策定し、犯罪被害者やその遺族の損害回復の援助と経済的支援、精神的・身体的被害の回復・防止、刑事手続への参加の機会の拡充などを行うこととし、これらの施策の実施に必要な人的・物的体制を整備する。

078.簡易・迅速・柔軟な救済を行う人権救済制度の確立
差別や虐待の被害者等人権を自ら守ることが困難な状況にある人々を、簡易・迅速な手続で、積極的かつ柔軟に救済する人権救済制度の導入を目指す。

「消費者被害の防止」に積極的に取り組みます。

079.消費者保護行政の推進
消費者被害の未然防止・拡大防止のため、一定の消費者団体が事業者の不当な行為を差し止める消費者団体訴訟制度を整備する法案を次期通常国会に提出する。

「個人情報保護」の徹底を進めます。

080.情報セキュリティの確保
巧妙化するコンピュータウイルスや不正アクセスの被害を最小限化するため、セキュリティ基盤技術の推進、専門家の育成、情報セキュリティ文化の普及を推進。サイバー犯罪条約の発効を受け、国内法の整備を推進する。

081.高度情報化の進展に伴うプライバシー保護の充実
複数の法律の狭間で処罰の対象となっていない民間企業の従業員個人による情報漏洩に関する罰則を整備し、また、住民基本台帳等の閲覧を原則的に公益目的のみに限定するため、個人情報保護法等関連法の改正を早期に国会に提出する。

© 自由民主党

http://www.jimin.jp/jimin/jimin/2005_seisaku/120yakusoku/index.html より

    ※この他、公務員制度改革・地方行政改革政策の一環として、各府省・地方自治体・公務員の法令遵守(コンプライアンス)推進。競争政策の一環として公正取引委員会のあり方見直し、知的財産保護。危機管理政策の一環として、「緊急事態基本法(仮称)」制定。青少年政策の一環として、「青少年健全育成基本法案」の早期成立。外交政策の一環として、海洋権益の確保、経済制裁発動も視野に入れた拉致問題対処。安全保障政策の一環として、防衛庁の「省」昇格、大規模テロ・ゲリラ・NBC兵器による攻撃等緊急事態対処能力強化、情報収集能力向上と安全保障にかかわる秘密保全強化。

 

○日本共産党

自民党政治ときっぱり対決するたしかな野党・日本共産党をのばしてください ──総選挙にあたっての訴えと7つの重点公約── (抄)

 治安関係の項目なし。

© 日本共産党中央委員会

http://www.jcp.or.jp/seisaku/2005/05syuuin_seisaku.html より。

    ※なお、外交政策の一環として、無差別テロと報復戦争に反対し、「テロを根絶するための国際的な世論と共同行動を発展」させるとする。同様に日朝関係につき、日朝双方が拉致問題解決のため努力すること、交渉打ち切りや「力の政策」などをいましめあうこと、等を働きかけるとする。

 

○民主党

民主党 日本刷新 8つの約束 (抄)

2005年 民主党マニフェスト重点項目

2 安心・安全で格差のない社会・身近な幸せの実現

  • (前略)
  • 警察改革で不正を一掃、警察官3万人増員で空き交番解消、犯罪被害者支援も強化します。
  • 国民の預貯金を守ります。盗まれたキャッシュカード・預金通帳や偽造キャッシュカードで生じた損失は、原則として金融機関が補償することとします。

マニフェスト政策各論

13 暮らしの安全・安心

  1. (省略)
  2. (省略)
  3. 偽造・盗難カード、通帳による不正な預金引き出しから預金者を守ります。
    技術の進歩でカード・印鑑の偽造が容易になったこともあり、偽造・盗難カード、通帳による不正な預金引き出しの被害が拡大していますが、現状では預金者がすべての損失を負担せざるを得ません。偽造・盗難カードのみならず、盗難通帳による不正な預金引き出しから預金者を守る法案を、政権獲得後すみやかに成立させます。
  4. (省略)
  5. 盗聴法、住基ネット法、個人情報保護法を見直します。
    政権獲得後ただちに、盗聴法の運用を凍結し、2年以内に抜本改正の法律案を国会に提出します。また、住民基本台帳法の住基ネット条項と個人情報保護法についても、即時に見直しに着手し、抜本改正のための法律案を国会に提出します。
  6. 住民基本台帳の大量閲覧を制限します。
    地方公共団体の窓口で大量に閲覧された個人情報(住所、氏名、生年月日、性別)をもとに、ダイレクト・メールが勝手に送られてきたり、犯罪に悪用されたりする問題が起きています。住民基本台帳の閲覧者を国、地方公共団体、公益上特に必要と認められる者に制限する「住民基本台帳・大量閲覧制限法案」を成立させます。
  7. 信頼される警察行政を取り戻します。
    本来は現場で捜査に使うためのお金を、長い間慣習的に一部の上層部が私的流用していたという警察不正経理疑惑は、内部告発などにより深まる一方であり、警察行政への信頼は低下しています。政治主導で不正経理問題の解明を行い、その調査結果を踏まえ「報償費」「捜査費」などを改廃・圧縮するとともに、現場の警察官が使いやすい会計制度に改めます。
    また、警察を監督する公安委員会の事務を警察が行っているという矛盾を解消するため、警察法改正案を提出し、国家公安委員会・都道府県公安委員会に独立した事務局を設置します(所要額48億円)。また、「国家による国家のための秩序維持」ではなく、「国民による国民のための治安の確保」のために、都道府県知事・都道府県議会による監督の強化、苦情処理制度の大幅拡充など、市民の声を反映した透明度の高い警察行政を実現します。
  8. 警察官の3万人増員により、落ち込んだ検挙率を回復させます。
    落ち込んだ検挙率を回復させるために、4年間で地方警察官を3万人以上増員し、「地域・刑事・生活安全」警察機能の拡充、防犯パトロール体制の強化と「空交番」解消をすすめます。そのために毎年7000人以上の増員と、約700億円の財源を充て、4年後には3000億円の予算を確保します。また、地域社会の防犯機能を生かすため、自治会、町内会などが自主的に結成する「防犯パトロール隊」などに対し支援を行います。
  9. 急増する薬物乱用対策に取り組みます。
    薬物乱用の低年齢化を防ぐため、薬物依存からの回復者の体験談などを通じて、薬物依存の恐ろしさが実感できるような中高生への教育・啓発活動を実施します。薬物依存・中毒者への治療と自立支援、家族からの相談支援体制を整備します。省庁横断的な薬物取締体制を強化し、薬物の供給源根絶に取り組みます。
  10. (省略)
  11. 消費者団体訴訟制度を創設します。
    「生活者」「納税者」「消費者」の立場を代表し、国民・消費者の視点に立った政策実現を図ります。消費者の利益を擁護するために、消費者団体が消費者全体の利益のために訴えを提起することを認める消費者団体訴訟制度を創設する法案を提出します。
  12. 「公益通報者保護法の改正」、「公益開示法」、「危険情報公表法」で国民の生命・財産を守ります。
    「公益通報者保護法」を改正し、公共の利益に資する通報をした下請等事業者が不利益な取扱いを受けないよう保護します。同時に、公務員を対象にした「公益開示法案」、事業者に危険情報の提供や行政庁への報告等を義務づける「危険情報公表法案」を成立させ、消費者・国民の生命・財産を守ります。
  13. (省略)

Copyright © 2005 The Democratic Party of Japan. All right reserved.

http://www1.dpj.or.jp/manifest/Manifesto_2005.pdf より。

    ※この他に、重点8政策「民主党8つの約束」中、外交安保政策において、緊急事態に対処する「緊急事態基本法」制定と「危機管理庁」設置、および北朝鮮拉致問題について改正外為法等の措置発動も視野に入れた積極的取り組みをうたう。各論としては、外交・安全保障政策の一環として日米地位協定の改訂着手(在日米軍の凶悪犯罪容疑者の引渡し関係など)、テロ・ゲリラ・サイバー攻撃や不審船・武装工作員など多様な脅威に柔軟に対応できる新防衛構想の策定、尖閣・竹島を含む領土・領海・排他的経済水域の保全、北朝鮮政策に関連して不審船による密入国・密輸・覚醒剤事件等の取り締まりなど海上警備体制の強化。教育政策の一環として、学校安全対策を総合的かつ計画的に推進するための「学校安全基本法」制定。経済・規制改革政策の一環として、独占禁止法の改正と公正取引委員会の機能強化。法務・人権政策の一環として、裁判員制度実施に向けた環境整備、刑事司法改革・取り調べ過程可視化、犯罪被害者対策強化、仮釈放のない「終身刑」創設、DV防止法強化、「高齢者虐待防止法」および「障がい者虐待防止法」制定、人権侵害救済のため国際機関への個人通報制度化。

 

 以上、主要5政党の治安関係政策でした。なお、ところどころ文字や文章がおかしいと感じられる部分もありましょうが、どうぞ御看過下さい。原文の誤字脱字などなどは一切修正していません。

 また今回の選挙では、郵政民営化関連法案への賛否を巡って自民党が分裂し、新たに2つの政党が誕生しました。「国民新党」及び「新党日本」です。両党については、今回は取り上げませんでした。残念な事に、両党のWeb Pageを見てもまとまった形の政策集というのが見当たりません。存在しないのか、存在するにしてもWeb Page掲載が間に合わなかったのか。いずれにしても、ないものは云々しようがない。よしんば紙媒体のものはあるとしても、わざわざ問い合わせして取り寄せなんて事するのは面倒ですし(失礼!)、当方の住まう九州福岡とは縁もゆかりもない政党ですから……。よって今回、両党については取り上げません。次回の選挙でお会いしましょう。

 さて、改めまして主要5政党の政策集に見られる治安政策について。これまで書いて来たところの事ですが、私は、政策集を読むに当たり、次の事を期待します。

  • 各党が、現在の治安情勢をどう見ているか。原因まで含めてできるだけ具体的に。
  • 状況が改善するには、どのような対策が必要か。短期的なものと中・長期的なものに分けて。
  • 実際の政策に落として見た場合、具体的にどういった内容の政策を、どれくらいの期間かけて実施するつもりでいるか。その際、政策実現に必要な費用の見積りとその財源まで記してあれば、なおよし。

 以上の3点です。政策の具体的な中身が妥当か否かというのは、以上の検討を経た後にようやくやって来る話。過去2回の選挙で出された政策集を眺めてみたところ、上記3点を小なりとも満たしていると思われるのは自民党と民主党の政策集のみ。後はどこかしら欠けていると感じられたものです。公明党は1.の現状認識を語らず、個別の政策のみを出す傾向にあります。社民党と共産党は、現状認識と理念は語るのですが、2. / 3.の具体的政策となるとスカスカです。困ったもんだ。

 今回の選挙は、これまでになく準備期間の短いものでした。それが政策集にどう影響を与えているか、もっとはっきり言えば、どれくらい手抜きがされているか、かなりどきどきものです。してその結果は……

 はっきり申し上げまして、お話になりません。読んでいてめまいがしたほどです。

 治安政策を見るに当たり私がまず取り上げるのは、治安に関して各党どのように現状把握しているかという点です。この点は、治安対策の土台となるべき部分として、私が最も重視するところです。極論すれば、具体策が皆無でもここさえしっかりしておれば一票投じちゃうかもしれない、それくらい私にとっては大事な部分です。その治安に関する現状認識、そして治安の理念は、各党の政策集においてどのように表現されているか。

 ……皆無に等しい。私が最も重視する治安の現状認識、これが皆無に等しい。「今、我が党が見るに、治安上の危機はこれこれである」、その記述が見当たりません。唯一書いているとみなせそうなのが民主党ですが、かの党とても、各論カテゴリーで9項目に及ぶ治安関連の政策目標を掲げておきながら、現状認識から書き起こしていると読めるのは甘く見ても3. 6. 7. の3項目のみ。他は単に政策をぽつんと出しただけ。

 しかし、民主党はまだいい。9項目中3項目のみとはいえ、書いてある事はあるのだから。自民と公明は、単なる政策カタログ状態です。現状認識が抜け落ちた「これをやりますリスト」にしかなっていません。だから、なぜそういう政策をやるべきだと、思ったんですか? そこがまず知りたいんだって!

 政権与党のこの手抜きぶりを見ると、治安政策を捨てた共産・社民の姿勢がむしろ潔く感じられるほどです。わけても共産党の場合、治安専門の政策こそないですが、それ以外のところで政策集の作り方に工夫がこらしてあって、感心しました。以下、ちょっと引用を。

日本共産党は、野党としてつぎの仕事にとりくみます──7つの重点公約

【5】 人間らしいくらしを実現するために、国民の運動と力をあわせ、政治を動かします

安定した雇用と人間らしい労働のために……財界の「リストラ」とそれを後押しする労働法制の改悪によって、パート、派遣、契約などの不安定雇用が急増し、非正社員が3割にのぼっています。とくに若い世代や女性では、2人に1人が非正社員になっています。正社員になっても、異常な長時間労働と法律違反の「サービス残業」がまかりとおっています。大企業の34歳以下の正社員を対象にした調査では、会社にいる時間は平均でも11時間16分にもなり、約4割が「今の働き方が続くと病気になる」と答えています。

 人間はモノではありません。人材を使い捨てにするような働かせ方は、目先のコスト削減にはなっても、中長期的には企業のためにもなりません。

 日本共産党は、財界による「解雇自由化」のたくらみをはねかえして、労働基準法に、会社による勝手な解雇を規制する条項をつくらせるたたかいで、大きな役割をはたしました。異常な長時間労働の是正、「サービス残業」の根絶でがんばってきました。国会で1976年以来、240回を超える質問で追求し、2001年には厚労省にサービス残業をなくすための通達を出させ、それ以来、605億円を超える不払残業代が支払われました。

(以降省略)

 うまい。

 最初に現状認識を数字入りで語り、「人間はモノではない」と理念を高らかにうたう。続けて、この理念実現のためにどんな事をしてきたかを綴る。曰く、1976年以来国会の場で追求して来た、2001年には厚生労働省に通達を出させた、そのお蔭で不払残業代が支払われるようになった……。理念とそれを実現する実行力をアピールするに当たり、説得力を持たせる工夫が凝らされていて実に良い。「通達を出させた」「不払残業代が支払われるようになった」という辺りは、具体性があって素晴らしい。

 もちろん、国会で賃金不払残業の追求をしたのは共産党だけではないし、共産党の追求だけがきっかけで厚生労働省の通達が出された訳でもない。しかし、そんな事はよいのです。自党の手柄として前面に押し出し、実行力を誇示し自説に説得力を持たせる。ここが最も大事なのです。同様の工夫は他の政策でも凝らされており、お蔭で共産の政策集は読んでいて気分の良いものでした。

 こういう工夫を、共産といわず全党が、治安政策の面においても、やってくれないもんですかね?

 共産のこの政策集を読むにつけ、今回の選挙が郵政民営化を争点とした急転直下の解散でもたらされた結果、どれほど大きな影響を受けたか……しみじみ感じてしまいます。実際、自民の政策集を見てみると、郵政民営化とそれ以外の政策とでは扱いにかなりの差があります。なるほど、選挙に至る一連の動きを汲めば理解できる作り、とはいえ一方、仮にも総選挙という以上は理念と政策一揃いでまとめて来て欲しかった……という願望は強い。自民は平成15年16年と、理念から具体策まで一応形を整え出して来ているだけに、なおさらそう思いました。

 現状認識は政策の源泉です。個別の治安政策が一致しなくとも、現状認識が一致しておれば、「私が希望する政策Aは、現在政策集に含まれていないのであるが、現状認識がかようなものであれば本案件についても今後対策の必要性を認めるに至るのではないか」と期待する事ができます。もちろん、政策集に既に載っている政策そのものについても、その意図するところを含めより深く理解できる事は言うまでもない。

 しかし、現状認識が語られていない場合、挙げられている個々別々の政策以外にはやる気はないのか?と勘ぐりたくなってしまう。空き交番ゼロ作戦大いに結構。でもね、目的は空き交番を埋める事じゃないだろ。何のために空き交番を埋めるんだよ。もし街頭犯罪対策のためなら、空き交番埋めるだけじゃだめで、交番勤務員の積極的な警ら・職務質問が欠かせないだろ。いざ街頭犯罪発生となれば交番勤務員も初動で臨場したり、場合によっては緊急配備するだろうが、そのための通信司令能力の整備やパトカー等の資機材整備はどうするんだ。その辺りすっぽかして「空き交番なくします」だなんて、単なる空念仏に過ぎぬ。その辺りも考えてるんなら、それが分かるようにちゃんと書け。現状認識からきちんと書き起こせ!

 

 以上、平成17年衆院選を取り上げてつらつら書いて参りました。前回も書いた事を改めて書きますが、私みたいな人間にとって、選挙に際して出される政策集は、投票先を判断するほぼ唯一の具体的材料です。後は、報道で言われている内容と個人的な漠としたイメージしかない。私は党員じゃないですから、党の講演会なんか行かないし、機関紙も読みません。間欠的に発表される「我が党の提言」みたいなやつも見ない。そもそも存在すら気付かなかったり。こんな無党派野郎の票を本気でかき集める気なら、どうか政策集を大事にして下さい。

 といったところで、私の駄文はおしまいです。相も変わらず勝手放題言ったものだと改めて苦笑中。お目汚しにてすいません。しかも選挙終了後の発表なんで、参考にも何にもならんですね。とりあえず、ねた半分に楽しんでもらえれば幸いです。

 

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