治安を守るのはどの政党?〜平成16年参議院議員選挙〜

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 今年もやって参りました。選挙の季節が。平成16年7月11日、参議院議員選挙です。

 前回、昨年11月の衆議院議員選挙は、"マニフェスト選挙" なんて通称も生まれました。言い出しっぺは民主党らしいのですが、各政党こぞって政策集を発表。これはねたになるぞという事で、(投票終了後ではありますが)「治安を守るのはどの政党?」を書いたものです。反響は何一つないのですが、読んで楽しんでもらえたものと確信しております。(笑)

 さて。前回に引続き今回の参議院議員選挙でも、各政党から続々と政策集が発表されております。単体で読むもよし、前回のものと比較して読むもよし、投票の際の大きな参考となりうるものです。かつ、私にとってもねたとなりうるものです。

 よって、前回に引続き今回も、「治安を守るのは…」と題しまして、各政党の治安政策を比較し、ちょっと一言書いてみたいと思います。例によって例のごとく、公職選挙法の規定により投票終了後の公開になってしまうのですけれども、それはそれとしまして。

 まずは、各党の政策集より、治安関係部分を抜粋します。なお、治安政策とは銘打ってない部分の政策にも、直接/間接に治安と関係ありと判断されるものは存在します。それについては、私の方で適宜要約を加えた上で、抜粋の後に列記しております。

○公明党

公明党のマニフェスト123 (抄)

第2章「安心・はつらつ社会」の構築

6.安全・快適な街づくり

(治安の回復=安心の暮らし、徹底ガード)

空き交番ゼロ作戦の展開

空き交番ゼロ作戦を展開します。そのため、平成16年度から警察官1万人を増員する新たな3ヵ年計画を政府に策定させることとあわせ、警察官OBの活用や交通違反(駐車違反取締り等)の一部民間化等を進めます。

進捗状況

都道府県警察で、交番勤務員の増配置、交番相談員の活用等による「空き交番」解消のための3ヶ年計画を策定中です。警察官は、2004年度、3150人の増員を予算に盛り込みました。交通警察の一部民間委託では、駐車違反対応業務の民間委託を可能にする道路交通法の改正案が今国会で成立しました。

今後の課題

「ゼロ作戦」のさらなる強化をめざします。

安心・安全の地域社会づくり / 民間警備員による地域パトロールの強化

地域パトロールの強化で犯罪を許さぬ街にします。そのため、一定の教育・訓練を受けた民間の警備員(現在、警察官の倍近い44万人超)等と提携し防犯パトロール等を本格的に実施するとともに、自主的な防犯組織の形成など、安心・安全の地域社会づくりを推進します。

進捗状況

現在、都道府県警察では緊急地域雇用創出特別交付金事業を活用して、民間警備会社等に防犯パトロール等の事業を委託しています。2003年度(11月30日時点)は、34道府県において実施しています。また、警察としても地域によっては、警備業者の日常の活動の中で、犯罪に関する情報の把握、通報などの協力を得ています。

今後の課題

全都道府県で上記委託事業を進めるべきです。今後、地域の自主的な防犯への取り組みに対する、国や地方公共団体の責任を明確にし、継続的・実効的支援を確保することが必要です。特に、現行の緊急地域雇用創出特別交付金事業は2004年度が最終年度となるが、2005年度以降、継続されるか否かが大問題となっています。

出入国管理体制を確立する等、犯罪対策を強化

外国人犯罪に対しては、毅然とした出入国管理体制を確立するなど、犯罪対策を強化します。

進捗状況

空港・港湾での水際対策、危機管理体制が強化(水際危機管理チームを内閣官房に設置、空港・港湾危機管理官任命等)て、2004年度予算で入国審査官、入国警備官を増員しました。入管法の改正案が今国会で成立しました。

今後の課題

水際対策は各省庁の横軸の有機的連携が重要です。今回、その体制を確立したが、機能するか否かについてはこれからの問題です。今後、組織のあり方、運用等についてしっかり検証し、常により良い組織体を目指すべきです。

現場重視の警察行政の実現・総合的な治安対策

警察行政については、キャリア(国家試験一種採用者)の現場経験期間の延長や優秀なノンキャリアの登用を推進するなど「現場重視」に改めます。また、対症療法的な治安対策に終始せず、政府(関係省庁)が総力をあげて治安悪化の徹底究明と根本的対策を講ずるようにします。

進捗状況

警察大学校卒(警部補)の現場経験期間は従来の9ヶ月から14ヶ月に延長されました(2003年度)。現場経験後、本来は警察庁の係長となるが、警察署の課長代理への任用もしています。またノンキャリアの登用については、現在、警察庁の課長、県警本部長、北海道警察本部の方面本部長を登用しています。今後とも、現場重視の人事制度を進めていく予定です。総合的な治安対策については、2003年12月、政府の犯罪対策閣僚会議において、「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」を発表し、政府あげて取り組むことに決定しています。

今後の課題

現場経験期間を2004年度中に15ヶ月まで延長したいと考えています。治安対策については、この行動計画の速やかな実施が必要です。

Copyright (c) 2004 New Komeito. All Rights Reserved.

http://www.komei.or.jp/manifesto/policy/priority/manifest_hajimeni.html より。
    ※以上の他、司法・人権政策の一環として裁判員制度の導入、DV防止法の見直しと強姦罪の罰則強化。平和・国際貢献政策の一環として警察期間による麻薬取締り、麻薬取引阻止に向けた海上警備体制の拡充。なお、上記政策は昨年の衆院選での政策「マニフェスト100」が元となっているが、これに今年追加された「追加マニフェスト23」中で、子どもの安全が唱えられている。具体的には、学校防犯マニュアル・通学路安全マップの策定、全小中学生に対する防犯ブザー貸与、5年以内を目標とした「スクールガード」(学校警備員)配置。また児童虐待防止策として、児童相談所・児童福祉施設・学校・保健所・病院・警察・地域ボランティア・住民などからなる「児童虐待防止市町村ネットワーク」を今後5年以内に組織すると発表。

 

○社会民主党

第20回 参議院選挙政策集 3つの争点 9つの約束 (抄)

9つの約束

V.分権・自治

3.暮らしの安全を守ります

  1. 警察活動の信頼回復
     「安全な国」神話が崩れ、市民の間に不安が広がっており、犯罪を減らし安心できる社会を取り戻すことが求められています。「犯罪は社会の鏡」といわれるように、その背景には景気の低迷や政治不信、過度の競争原理主義が社会の混乱、犯罪を招く点があることにも留意すべきであると考えます。また、適正な監視システムも確立がないままの警察力の強化は、市民活動の阻害につながる両刃の剣となる危険性もあります。検挙率の向上にしても、まず警察不祥事の根絶と信頼回復、捜査能力の向上が必要です。警察が真に市民生活の安全の守り手として、国民からの信頼を回復するためにも、住民代表や有識者など外部の第三者による監視機構を設置します。また、公安委員会が本来の趣旨に立ちかえり、市民の代表として警察をきちんと管理するようにその機能の強化に努めるとともに、公安委員会がより市民の理解をえるため、その活動内容を明らかにする「白書」の発行などを行うようにします。
  2. 「空き交番」の解消
     「空き交番」が増えていますが、警備公安警察のあり方や機動隊の大胆な見直しを行い、防犯や交通安全など市民生活に密着した刑事部門、生活部門、交通部門の現場を重視するなどの強化することによって適正な配置に努めます。
  3. 消防力の強化
     省略

(c) 社会民主党

http://www5.sdp.or.jp/central/topics/04sanin/seisaku/index.html より。

    ※以上の他、人権政策として公安調査庁の廃止・通信傍受法の廃止、難民申請者の受け入れ簡易化を目的とした入管難民法の改正、代用監獄制度の廃止をうたう。また男女平等政策として、DV法の強化・改正、米軍基地の整理・縮小・撤去(米軍基地周辺で多発する女性暴行事件は軍基地の持つ構造的問題、との観点に基づく)を唱える。

 

○自由民主党

さらに進める小泉改革 自民党参議院公約
政権公約「小泉改革宣言 2003」の検証と新たな展開 (抄)

第1章 小泉改革5つの成果

2.暮らしの安全・安心を守る

  1. 省略
  2. 省略
  3. 省略
  4. 省略
  5. 省略
  6. 犯罪のない安全な国の復活に向けて着実に施策を推進しました
    ○今後5年間で治安の危機的状況から脱却し、不法滞在外国人を半減するため、本年度はその1年目として、警察官、矯正職員、入管職員などを大幅に増員するとともに、施設の整備を行いつつあります。今後とも治安の基板整備に努めます。
    ○ヤミ金融対策法を制定したほか、悪徳商法から国民を守る諸対策を実施しました。また、個人情報の保護に関する基本方針を策定し、ハイテク犯罪に対処するための法案提出も準備しています。

第2章 参議院での重点的な課題への取り組み

治安の回復、テロへの対応、安全保障など危機管理のために

なぜ危機管理が重要か

身近な生活の場所での凶悪な犯罪が多発しており、国民の安全が脅かされています。子どもたちの命が狙われる事件も頻繁に起こっています。最近では、外国人による犯罪が目立っており、これに対しては、外交上の対応も含めて、断固とした処置が必要です。
また、アメリカの同時多発テロ以来、世界が協力してテロとの戦いに邁進しています。わが国も、オウム真理教による地下鉄サリン事件を経験しており、凶悪なテロ事件はけっして対岸の火事ではありません。北朝鮮の工作船が日本近海に出没し、海上保安庁の巡視船と銃撃戦となったことは記憶に新しいところです。わが国もまた、テロ対策に万全を期す必要があります。
さらには、激変する国際情勢を考えると、わが国の安全保障について根本的に検討することが必要です。
日本はまた、地震、台風、火山噴火など、自然災害の多い国です。阪神・淡路大震災の悲惨な体験を生かして、災害に強い国にする必要があります。
今こそ日本は、かつてのような、世界に誇れる「安全な国」に再生しなければなりません。

具体的な政策として

以上のような諸問題に対応するために、しっかりとした危機管理体制を構築しなければなりません。わが自民党は、長期的視点に立って、これまでも「安全な日本」を再構築するために全力を挙げてきました。国民の皆様のご期待に沿えるように、これからも次のようなさらなる努力を展開する決意です。

国内治安の回復
  1. 身近に起こる犯罪の抑止と安全な街づくりを進めます
    犯罪の抑止には、政府のみならず地域社会の果たす役割は大きいものがあります。このため、希薄化した地域の連帯を取り戻し地域社会の抑止力を再生するとともに、警察などとの連携強化などを通じ、地域を挙げて安全な街づくりを推進します。
  2. 「歌舞伎町刷新プラン」を実施します
    歓楽街は犯罪の拠点になりやすく、犯罪を減らし治安回復の実効を上げるためにも全国的な歓楽街地区の健全化を進める対策が急務です。このため、そのモデル地区として「歌舞伎町刷新プラン」を先行的に実施します。具体的には、国内最大の歓楽街であるとともに国際的な組織犯罪の拠点でもある新宿歌舞伎町地区を、国と都および区が連携して浄化を徹底し、治安回復と街の品格向上による都市再生のモデルとします。また、警察や関係機関、区民が連携して違法な風俗店や暴力団、外国人犯罪組織などの取り締まりを徹底し、犯罪インフラを除去し、清潔で健全な魅力ある街に生まれ変わらせます。
  3. 社会の相互協力で、青少年の健全育成と犯罪防止を進めます
    近年の少年犯罪の多発化・凶悪化の傾向は、極めて深刻であり、青少年の健全育成は社会全体の責任であることを再確認し、青少年健全育成基本法を早期に制定するとともに、他面的かつ総合的な対策を進めます。
  4. 外国人犯罪の温床である不法滞在者を半減します
    来日外国人犯罪は、20年前に比べて件数で10倍にもなっており、その温床ともなっている不法滞在者対策が不可欠です。このため現在、毎年4万人が新規発生し、4万人を退去強制している不法滞在者について、新規発生を年間3万人にとどめ、退去強制を5万人以上に増やすことにより、毎年2万人以上不法滞在者を減少させ、5年間で現在の25万人の不法滞在者を半減します。
  5. 捜査環境の整備と組織犯罪対策を強化します
    近年の厳しい犯罪情勢を考慮し、特に組織犯罪に対処するため、新しい捜査手法の導入など捜査環境の整備に取り組みます。
  6. 治安関係人員および関連予算を的確に確保します
    わが党は治安対策を5年間で集中的に行うべきとしており、人員をはじめとする治安関係予算確保の必要性を強調しています。来年度はその2年目として、的確に対処します。
    警察官の数を平成14年度には4,500人、平成15年度には4,000人、平成16年度には3,150人増員しましたが、今後とも警察官をはじめとし、入管職員などの治安関係人員の拡充に努めます。また、「空き交番」は3年で解消します。
  7. 犯罪被害者への支援体制を整備します
    犯罪被害者が、犯罪被害から早期に回復し、安全して社会生活を送れるよう、これまで立ち遅れていた犯罪被害者への支援を推進し、犯罪被害者の立場に立った総合的施策を構築するため、(1)犯罪被害者の権利を守り支援する原則を明らかにした基本法づくり、(2)刑事手続きにおける犯罪被害者への情報開示および参加の実現、(3)被害回復のための経済的支援の拡充、(4)精神的支援策の拡充、(5)犯罪被害者支援の担い手の育成および支援のための幅広いネットワークの基盤整備などを行います。
テロの未然防止
  1. テロ対策は何よりも未然防止が大切です。それには情報の収集・分析が不可欠です。警察をはじめ外務省、公安調査庁などの機能を強化し、情報収集能力を高めるとともに、政府として総合的に分析、共有する体制を強化します。また、情報収集衛星を早期に整備します。
  2. テロリストを国内に入れない、拠点をつくらせない、そして資金源を絶つことも重要です。このため、「水際対策」の徹底をはじめとする諸対策を推進します。
  3. 危機の時にはリーダーの決断が必要です。それを可能にするために、首相官邸の危機管理能力を高めます。
  4. 警察の特殊部隊(SAT)を拡充し、テロに備えます。
  5. 空港、新幹線、原子力発電所など重要施設に対する警備を万全にするため、警察や海上保安庁など、関係諸機関の連携を強化します。
確かな安全保障
省略

第3章 「政権公約」実施状況の検証と新たな施策

5.安全な国の復活 ──世界一安全・安心な国を

公約内容具体的措置および今後取り組むべき施策
(1) 今後5年間で治安の危機的状況から脱却 5年で危機的状況脱出、5年で不法滞在者25万人を半減。 治安回復に向けた基盤整備のため、国の治安関係職員の増員(矯正451人、入管168人など)、地方警察官3,150人増員などに加え、刑務所などの収容定員増に積極的に対応(矯正施設整備費約179億円)。また出入国管理体制の強化のため不法滞在外国人摘発体制の強化、地方海空港などにおける出入国審査体制の強化などに必要な経費を21億円計上。
[今後の取り組み] 現在、年間4万人が新規発生し、4万人を退去強制している不法滞在者について、入国審査および退去強制体制を抜本的に強化し、新規発生を年間3万人にとどめ、退去強制を5万人以上に増やすことにより毎年2万人以上の不法滞在者減少を進める。また、犯罪抑止に果たす地域社会の役割の大きさに着目し、地域の連携を取り戻し、地域社会と警察などとの連携強化により地域を挙げた安全な街づくりを進める。さらに、犯罪のない、地域住民と外国人が共生する健全な多文化交流の実現による都市再生のモデル地域としての「歌舞伎町刷新プラン」を推進する。このほか、犯罪被害者の権利を守り、早期立ち直りを支援するための「犯罪被害者総合支援策」を確立する。
159国会提出関係法令/(成立)暴力団対策法、国際捜査共助法、入管法
(2) 悪徳商法などの被害から消費者・国民を保護 2004年(平成16年)通常国会で消費者保護基本法改正。 消費者保護基本法改正案(議員立法)を平成16年通常国会に提出。
159国会提出関係法令/(成立)消費者保護基本法(議員提出)
公益通報者保護制度を整備。 平成16年通常国会に公益通報者保護法案を提出。平成16年度予算で公益通報者保護制度の運用に関する調査研究および普及啓発経費など1.1億円を措置。
159国会提出関係法令/(成立)公益通報者保護法
団体訴権制度を導入。 [今後の取り組み] 悪徳商法による被害の拡大を防ぎ、被害者の救済を速やかに行うための効果的な対抗措置として早期導入に努力する。
ヤミ金融対策法の厳格な運用 関係機関の連携により銀行口座、携帯番号の把握・閉鎖などの措置を迅速に実施可能に。 「ヤミ金融対策法」の施行(平成16年1月)を受け、機動的・効率的捜査のため業者の拠点が多数存在する都内に捜査拠点を設置。また銀行に預金口座の適切な管理などを文書で要請(平成15年9月12日)、当局が預金口座不正利用情報の提供を受けた場合の対応などに関し事務ガイドラインを改正・公表(平成15年9月12日)などの措置を実施。
[今後の取り組み] 銀行口座売買の禁止措置を検討する。
法律相談窓口の全国的な設置 3年以内にどこでも法的紛争解決の情報を得られる官民共働司法ネットを整備 司法制度改革推進本部などにおいて司法ネットの創設について関連法案を国会提出。また、同制度構築に係る具体的な諸問題を検討するための調査研究費を計上。総合法律支援法案を平成16年通常国会に提出。
159国会提出関係法令/(成立)総合法律支援法
(3) 警察・司法体制の抜本的な見直し・引き締め強化 警察官増員で「空き交番ゼロ」を目指す。街頭防犯カメラ設置推進。 「空き交番ゼロ」をはじめ治安体制を強化するため平成16年度に地方警察官を大幅に増員(3,150人)。スーパー防犯灯などに4億円強の予算を計上。平成16年度予算において検事56人(純増52人)、判事42人、判事補10人を増員。
「親身で頼れる警察」へ意識改革や新たな評価制度導入など、警察・司法の引き締め強化。 引続き検討。
159国会提出関係法令/(成立)警察法
(4) 個人のプライバシーが尊重される社会 インターネットや電子化の進展によるハイテク犯罪に対処し、プライバシー権利保護や情報窃盗罪などの法整備を推進。 159国会提出関係法令/(審議中)刑法(犯罪の国際化、高度情報化対処)
[今後の取り組み] 「情報窃盗罪」の新設、プライバシー保護施策の強化、盗難通帳やキャッシュカードなどによる預金引き出し、クレジットカードのスキミングなどハイテク犯罪への対処、迷惑メール防止対策の強化などを今後検討する。

参考資料; 最近10年間の来日外国人犯罪検挙推移表(省略)

(c) 自由民主党

第20参 自由民主党届出パンフレット等第1号「さらに進める小泉改革 自民党参議院公約」より

    ※この他、安全保障政策の中で、多様化する脅威に対応し得る防衛体制の整備、有時法制の整備、領土・領海の警備強化と海洋権益保護を掲げる。

 

○日本共産党

政治のゆがみをただす本物の改革をすすめ、国民が希望をもてる日本をめざします / 参議院選挙にのぞむ日本共産党の政策 (抄)

参議院選挙にのぞむ日本共産党の各分野の政策

16.国民の生命と安全をまもるために

治安への不安にこたえる

 凶悪犯罪が大きく報道され、身の回りでも空き巣やひったくりなどが起こるもとで、治安への住民の不安がひろがっています。ところが、いまの日本の警察のなかでは、言論期間、市民運動の監視、弾圧をおこなう警備・公安警察が、予算や体制などでいまだに幅をきかせています。しかも、組織ぐるみの裏金づくりが明るみに出ても、警察は自ら真相を明らかにし、それをただす意思も能力も存在していません。

 日本共産党は、警察のいちばんの仕事は市民生活の安全を確保することという見地にたって、現在の警察の体質、体制を改革します。同時に、警察官に週休2日制が導入された際、必要な人員増がされなかたったため空き交番が増えていることが、不安に拍車をかけています。日本共産党は、警察官を市民生活の安全の分野に適正に配置し、足りない場合は最小限必要な警察官を増員することにより、空き交番を即時に解消します。

テロから国民の生命・安全をまもるために

 いま、テロを根絶することは、人類生存の条件になったといえるほど、切実な問題となっています。日本国内でも、多くの人々が、テロの不安を感じています。

 罪のない人びとを恐怖に陥れるテロは、日本の右翼暴力団によるものはもとより、誰によるものであれ、いかなる理由があっても、絶対に許すことはできません。日本共産党は、国民のいのちをあらゆる手段で守るという見地から、この間、テロ対策に有益な条約、法律に賛成してきましたが、こんごとも必要な対策の整備を求めていきます。

 国際的なひろがりをもつテロに対処するためには、国際的な協力によって、情報の収集を国の内外で徹底し、テロ集団の資金の流れを押さえていくことが決定的です。そのために、テロ資金供与防止条約、核物質防護条約をはじめ、テロ対策の基本を規定した12の条約、関連する国内法の厳格な実施を求めます。

 テロ集団の潜入を阻止し、摘発するうえで、警察行政、出入国管理行政の役割が重要です。その活動と体制を充実させるようにします。それでもなお、大規模なテロ事件が発生するときは、可能なあらゆる手段で国民のいのちをまもります。

 テロはどんなものであれ許さないのは当然ですが、一方、貧困や飢餓、大国による国際的無法行為の存在が、テロの口実となり、テロ集団を勢いづけているのも事実です。テロの口実をなくしていくことが、国民のなかでテロリストを孤立させることにもなります。テロを根絶するためにも、国連憲章の平和ルールの確立、人道支援分野での政府開発援助(ODA)の充実、異なる価値観をもった諸文明間の対話と共存の関係の確立に全力をつくします。

 テロに対するアメリカの報復戦争は、テロを減少させるどころか、逆にテロの土壌をひろげ、拡散させています。テロ根絶に向かううえでも、アメリカの「対テロ戦争」に反対し、国連憲章にもとづく平和のルールをきずくことが重要です。

(c) 日本共産党中央委員会

http://www.jcp.or.jp/giin/senkyo/04_sanin/04seisaku/mokuji.html より。

    ※以上の他、女性政策の一環として、DV防止法の活用と、被害者保護・自立支援、民間シェルター助成、加害者更生対策等の諸策を提言。また、社会モラルの危機と子どもを守る必要に触れ、「市民道徳」の基準確立と子どもを守るための社会ルールの確立を目指すとしている。

 

○民主党

まっすぐに、ひたむきに。
国民とともに、新しい政治、新たな日本を創る──岡田克也の考える日本。── (抄)

マニフェスト政策各論

14 安全な暮らし

  1. 信頼される警察行政を取り戻します。
    本来は現場で捜査に使うためのお金を、長い間慣習的に、一部の上層部が私的流用していたという、不正経理疑惑などの不祥事により、警察行政への信頼が低下しています。第三者の弁護士・公認会計士・市民代表などからなる「警察予算適正化委員会」を設置して、警察経理の問題点の解明を行い、その調査結果を踏まえ、「報償費」「捜査費」などを改廃・圧縮するとともに、現場の警察官が使い易い会計制度に改めます。また、警察法改正案を提出し、公安委員会・都道府県公安委員会に独立した事務局を設置するとともに、苦情処理制度を大幅に拡充し、市民の声を反映した警察行政を実現します。
  2. 警察官の3万人増員により、落ち込んだ検挙率を回復させます。
    5年間で、52%に落ち込んだ凶悪犯罪の検挙率を5年前の水準である84%に回復させることを目標とし、4年間で地方警察官を3万人以上増員して、「地域・刑事・生活安全」警察機能の拡充、防犯パトロール体制の強化と「空交番」解消を進めます。4年間、毎年7000任程度増員し、毎年約400億円ずつ、4年後には1600億円の予算を確保します。また、地域社会の防犯機能を生かすため、自治会、町内会などが自主的に結成する「防犯パトロール隊」などに対して、その立ち上げ費用を支援します。
  3. 仮釈放のない「終身刑」を創設し、凶悪犯罪の罰則を強化します。
    罰則が軽過ぎると批判のある凶悪犯罪について罰則を強化し、仮釈放のない「重無期刑」の創設をはかるとともに、刑罰全体の見直しを進め、政権獲得後3年以内の刑法改正をめざします。
  4. 国民に身近で公正な司法制度に改革します。
    5年後の裁判員制度導入までに、国民の制度への理解が進むよう広報し、育児・戒護等への配慮を含め、裁判員が参加しやすいよう環境整備を行います。ビデオ録画等による取調べ過程の可視化、取調べ段階における弁護人立会権の確立、証拠開示の徹底等を実現する「刑事訴訟法改正案」を国会に提出し、成立させます。すでに提出している、犯罪被害者の権利を保障し、国や自治体に生活支援や精神的ケア等の総合的施策を義務付ける「犯罪被害者基本法案」を成立させます。
  5. ドメスティック・バイオレンス(DV)防止法を強化します。
    2004年通常国会で「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(通称:DV防止法)が改正されましたが、3年後の見直し時期に、積み残しの課題を盛り込んだ改正案を国会に提出し、加害者更生プログラムの導入、保護命令対象の親族等への拡充、ファックスや電話等による脅迫の禁止を実現します。自立支援体制の強化、特に民間シェルターに対する財政等の支援の強化等のために、年間約25億円の予算を確保します。
  6. 「公益通報者保護法の改正」、「公益開示法」、「危険情報公表法」で国民の生命・財産を守ります。
    「公益通報者保護法」を改正し、公共の利益に資する通報をした下請等事業者も不利益な取扱いを受けないよう保護します。同時に、公務員を対象にした「公益開示法案」、また、事業者に危険情報の提供や行政庁への報告等を義務付ける「危険情報公表法案」を成立させ、この三位一体の法律により、消費者・国民の生命・財産を守ります。
  7. 自然災害による被災者を対象に、住宅本体への再建支援制度を確立します。
    省略

(c) The Democratic Party of Japan All right reserved

http://www.dpj.or.jp/manifesto04/ より。

    ※この他に、重点8政策「民主党8つの約束」中、外交安保政策において、ミサイル、テロ、ゲリラ、サイバー攻撃、不審船・武装工作員などの多様で新たな脅威に対し、柔軟に対抗できる新しい防衛体制確立を目指す事をうたう。各論としては、既存の防衛予算振替で財源を確保し、防衛体制を確立する。尖閣・竹島を含む領土・領海・排他的経済水域を守る。国内テロ・有時などにも対応可能な危機管理庁の設置。北朝鮮の不審船に対処するための海上警備体制強化。犯罪対策を視野に入れた日米地位協定の改定など。また、児童政策として、児童虐待防止のために児童福祉司を増員。人権政策の中で、政権獲得後の通信傍受法の即時凍結を発表している。

 

 以上、主要5政党の治安関係政策でした。なお、ところどころ文字や文章がおかしいと感じられる部分もありましょうが、どうぞ御看過下さい。原文の誤字脱字などなどは一切修正していません。

 さて。前回も書いたところの事ですが、私は、政策集を読むに当たり、次の事を期待します。

  • 各党が、現在の治安情勢をどう見ているか。原因まで含めてできるだけ具体的に。
  • 状況が改善するには、どのような対策が必要か。短期的なものと中・長期的なものに分けて。
  • 実際の政策に落として見た場合、具体的にどういった内容の政策を、どれくらいの期間かけて実施するつもりでいるか。その際、政策実現に必要な費用の見積りとその財源まで記してあれば、なおよし。

 以上の三点です。政策の具体的な中身が妥当か否かというのは、以上の検討を経た後にようやくやって来る話。残念ながら前回は、最初に挙げた「現在の治安情勢の認識と対策の方向性」について、詳しく語っている政党はありませんでした。社民党、共産党がやや語っていると見なしえたものの、満足行くというほどではなし。唯一、以前自民党が出した、総選挙向けではない政策集のみが満足行くものでした。

 残念といえば残念ですが、しかし、仕方ないのかもしれません。幅広く読んでもらうためには分かりやすく書かねばならず、そうするとこまごま理屈をこねる訳には行かなくなりますから。けれど、それでも、できる範囲で理屈をこねて理念を語ってくれないものかな、と思ったものでした。

 それから半年余り。各党の政策集はどう変わったか? 治安については、どう考えどう手を打とうとしているのか? 以下、その内容等について一言述べて参りたいと思います。

 がしかし。その前に。批判しなければならない政党があります。社民党です。

 社民党は、今回の参議院選挙に当たり、政策集を発表し、その中には治安政策も含まれていました。しかし、そこに書かれている内容は、前回平成15年11月の衆議院選挙の際に発表された政策集、それに含まれていた治安政策と全く同一の内容です。驚くべき事に一字一句たりとも変わっていません。いや、正確には、今回の治安政策の文面には脱字がありました。それを加味するとむしろ前回以下。

 今回社民党が発表した政策すべてが前回そのまま、と言うつもりはありません。他分野の政策では、色々変化があり評価すべき点もあると聞きます。しかし、私はあくまで治安政策のみに注目し、そこを基準に物を言います。治安政策のみに注目した場合、前回と全く変化なしという点は、厳しく批判されなくてはなりません。

 例えば、警察監視の必要性を説くのであれば、前回衆院選から今回参院選までの間に発覚した警察不祥事を例に挙げ、監視の必要性を述べる、という手法が取れるでしょう。事実、共産党と民主党はそうしています。にも関わらず全くの手つかず、文面すら変更しないとは。手抜きも甚だしい。

 政策集でこのような手抜きをされるのであれば、その内容・実効力についても疑問を持たざるを得なくなります。従って、今回は、社民党の治安政策は検討の対象にしません。その値なし、という事です。以前のお古のCopy abd Pasteで済ますなど、有権者を愚弄するにも程がある。さらに言うなら、その程度の治安認識で警察監視の必要を説くなど、片腹痛い。まさしく笑止。全くもってやる気が感じられません。

 では、改めまして、社民党を除いた残る4政党の治安政策について。

 まずは、治安に関して各党どのように現状把握しているか。この点は、治安対策の土台となるべき部分として、私が最も重視するところです。

 いきなり結論から言ってしまうと、きちんと語っている順で並べて、自民・共産・民主と感じました。自民は、まず「なぜ危機管理が重要か」と題して総論(現状の概観)を述べ、その次に項を改めて各論を述べています。構成上の分かりやすさがあってよいのではないかと。内容自体は、身近な凶悪犯罪とテロを取り上げた、正直な話新味のないものなのですが、しかしそうであっても、私は書いてあるという点そのものを評価します。大体、誰にでも分かりやすく、を心がければ、ああいうものになるでしょう。仕方ないね、とも言えるし、手堅いとも評価できる。共産は、自民のような分かち書きを採用してはいませんが、読めば理解はできます。あと、先の衆院選の際には治安に直接関係する項目がなかったのに、今回はきちんと立てて来た、という点も大きい。前回は、道徳を軸にした少々曖昧さのあるものでしたが、今回は治安上の不安と警察への信頼、テロ対策、という2本の柱を立てて明確に語ってくれました。

 民主は、共産と同じく各論の治安部門、そこの各項中にて現状認識と対策をそれぞれ述べています。一応、挙げられた各項目を見ればそれなりに認識の中身も読み取れるのですが、しかしいまいち弱いです。現状認識の記述がない項目もありますし。前回の衆院選の時もそうだったので、少しは改善されているかと期待したのですが……。できれば、「何を問題と感じているのか」を、最初に項目立ててひとくさり語ってもらえれば。公明は、現状認識抜きでいきなり政策だけ並べられていまして、唐突です。おそらくは、政策を掲げているという事でもって「その部分を問題と感じている」、つまりは裏返して見よという事なのでしょう。しかし本来政策というものは、現状認識と理念、それらに基づいて出されるもののはずです。それ抜きで政策だけ出されても困る。

 何度も言いますが、「何をやるか」も大事だけど、「何を考えているか」も大事なのです。少なくとも私にとっては大事です。政策集という以上、党の事を何も知らない人間の目にも触れるんですから、そういう分かってない人が見ても何を考えているのかが分かるように書いてもらいたいのです。専門的に細かく書く事は求めていません。今、治安上の問題とは何か。テロか。警察の信頼が揺らいでいる事か。外国人の不法入国か。それとも別な何かなのか。何に注目しているかを端的に明らかにしてもらえればいい。問題の具体例(過去数年の関連する犯罪認知件数とか)まで挙げてもらえれば嬉しいけれど、そこまで要求はしません。とにかく、基本認識を明らかにして欲しいのです。その基本認識こそが、文字通り政策の基本となる。私はそう考えています。

 極端な話、「治安上の問題など何もない!」 これでも構いません。これなら、治安関係の政策が一切なくても、理解できます。現状問題ないと考えているのなら、特別に政策を打ち出す事もないだろう、と納得できます。そうせずに、ただ黙って治安政策抜きにされると、理解できるどころか不満ばかりが溜る事でしょう。逆に政策がある場合も同様で、いくら細かく政策を並べられても、それがどんなに私の好みに沿ったものでも、考えている中身が分からないのなら、どうしても疑問を持つ部分が出て来るものです。

 ちょっとした具体例を出しましょう。昨年の衆院選に当たり、私は文字通り治安およびそれに関連する政策のみで投票先を決めました。その当時一番の問題となっていたのは、年金であったようですが、私は年金問題は無視しました。実際どこに投票したかは伏せますが、保守新党に投票しなかった事は確かです。

 あの時、保守新党の発表した治安関係政策は、実に詳細で、群を抜いていました。数値目標や達成時期は示されていませんでしたが、治安政策として言及していた内容は手広く、様々な分野に渡っていました。特に感心したのは交通事故防止。他党は、せいぜい、警察官を増員しそれを地域・生活安全・刑事部門と並んで交通部門にも配置する、という程度の扱いです。しかし保守新党は交通事故防止をはっきり政策の一つとして掲げていました。テロ対策やら重防対象警備やら警察・自衛隊特殊部隊やらといった、私のような治安おたくに受ける派手な政策だけでなく、日常生活に密着したこういう点にも目が向いていたのです。交通事故の悲惨さと、その件数・犠牲者の多さは、もはや言うまでもありません。看過すべからざる問題、だけれども日常的で当り前過ぎてついつい扱いがおろそかになる。保守新党は、ちゃんと見ていました。感心したものです。

 しかし、結局、保守新党に投票する事はありませんでした。なぜなら、かの党は治安の現状認識を語っていなかったから。詳細なあれらの政策をなぜ出したのか、分かりませんでした。そりゃもちろん治安に問題ありと感じたから出したんでしょうが、しかしどの辺が問題なのか語ってくれなかった。ただ政策だけを出したのです。政治家は行政官じゃない。政策通でないと困るのは確かですが、実施すべき政策の振り分け、優先順位付けをするという大きな仕事があります。これは、理念と、きちんとした現状認識があって出来る事でしょう。残念ながら保守新党の政策集からは、そこまで読めませんでした。実に惜しい。

 と、いうわけで。現状をどう見ているかについては、簡潔でよいからきちんと語って欲しい。ほんとに、大雑把でいいから! 多くは求めません。

 理念と現状認識を語り、問題点をはっきりさせたなら、いよいよそれに対する具体的な政策です。実施予定時期と費用見積り、財源まで記してあればなおよろし。

 こちらも、いきなり結論から書いてしまうと、まず民主、次いで自民が満足行く出来と感じます。民主は、マニフェストと最初に言い出しただけあって、確保する予算額、実施目標の時期、数値目標が掲げられる場合にはそれも含めて出して来ます。これだけ書いてあれば、実効性がまずまず期待できます。自民は、政策費用の見積りがありませんが、一応「費用を的確に確保する」とは書いてあります。また一方で、不法滞在者対策や警察官増員など随所で目標数値と達成時期を掲げており、こちらも実効性がまずまず期待できます。

 公明は次点。優ではないが不可でもなし。共産は具体性が極めて薄く、評価できません。昨年衆院選の時もそうだったのですが、共産は、理念は語るのに具体的な政策となると足踏みしてしまいます。何をやる、とは書いてあるのですが、実際着手するに当たってどのような手段を取るか、どのように進めていくか、という点はほとんど触れられていません。具体的政策と言うからには、手段と達成までの道筋を示してこそです。それがなければ、単なる理念のカタログになってしまう。それでは信頼性に欠けます。どれほど平易な言葉で理念を語っても、実行力の伴わない理念に何の政治的意味がありましょう。政権与党ではないから、という言い訳は通じません。

 政権与党の話が出たついでに、ちと余談を。現在の政権与党といえば自民党と公明党ですが、両党の政策集では、昨年衆院選の際の発表政策がどれだけ達成されたか、という点に触れてありました。個人的には、こじつけに近いと感じられる理由で「達成」と称している部分も散見され、苦笑するところもあったのですけれども。しかし、過去の成果に触れるという点は実に良いですね。自民党の場合、パンフの末尾に簡略な一覧表を作り、そこを見れば衆院選の際の政策/具体的措置/今後の措置・今回新たに掲げた政策まで、系統立てて見る事ができます。また公明党は、前回掲げた100の政策を再度掲げ、それぞれに経過措置と新たな対策を書き添えています。これは実にいい。心動かされます。

 この手法は政権与党にとっては強みとなる点です(極論すれば、「成果」など、どこからでもどうにかしてひねり出せるものです)が、野党も工夫次第では採用できるでしょう。あれほど系統だったものではなくとも、党の主張に沿った法案の成立、党の主張に沿った政策の着手などは、載せられるはずです。実は与党提出の法案でした、なんて事も多いかとは思いますが、そこは法案成立に自党が寄与した点こそを強調する、というような表現上の工夫で何とかなりませんかね。政策面は、与党に比べ官庁情報が吸い上げにくいでしょうから難しいとは思いますが、着手した内容が野党の主張にも沿っている、という例は多いはず。治安でいえば、空き交番対策、人数の多寡は別にして警察官増員、また犯罪被害者対策。これらは与党のみならず野党も主張しているところです。別に完全に沿っていなくてもいい、一部でも沿っていれば、実績となり得ます。昨年実施されたこの政策は、我が党も従来より主張しており、昨年度予算案の審議の場においても強く実施を求めたところのものである、云々。こんな形で寄与を唱い実行力をアピールするのもありだと思います。政権与党だけに過去の実績を自慢させる事はありません。野党、工夫してくれ。

 ところで、余談にて与野党間における治安政策の共通点の話に触れました。実際は、どの程度、与野党間で治安政策に共通点はあるのか/ないのか。

 既にもう何度も触れたところの昨年衆院選の際は、一言で結論付けてしまうなら「社民・共産以外はおおむね同方向」というものでした。今年の政策内容を見てみると、やはり同様の結論が導き出されます。

  • 警察官の増員と空き交番解消
  • 警察行政の刷新 (公明・民主のみ)
  • 海上警備能力強化
  • 自衛隊のテロ対応能力強化 (自民・民主のみ)
  • 危機管理機能強化 (自民・民主のみ)
  • 犯罪被害者対策 (自民・民主のみ)
  • DV防止法強化 (公明・民主のみ)

 細かい内容は色々と異なりますが、これらの共通点に関していえば、方向性は同じ。他の政策についても、正面から対立するような正反対の政策というのはごく少ないものです。挙げるとするなら、民主党が通信傍受法の凍結を目指している点でしょうか。せいぜいこれくらい。同じく民主党の掲げる「警察予算適正化委員会」構想も、自民はかなり渋るでしょうが、しかし警察行政の刷新構想なら公明党も出しており(内容は相当異なりますけれども)、正反対とまでは言えません。

 昨年の衆院選後、今回の参院選までの間には、こういった各党共通の治安関係政策にも進展ありました。警察官は増員され、また陸上自衛隊には特殊作戦群を設置、テロ対策に寄与するものと期待されています。海上保安庁は警備能力の高い小型巡視船を順次就役させ、来年度以降は警備能力を高めた大型巡視船の建造も計画しています。こうした「業績」を、与党のみの手柄にさせておくことはない。野党にも活用の余地があると思います。

 具体的な政策に関する話は、こんな感じでしょうか。それらの政策の妥当性云々については、触れる事はしません。触れるとしたら「こんなやり方では効果がない」という切り口で行くか、「この党の政策にはこれが欠けている」という切り口で行くかですが、前者で行くには知識なし、後者で行けばきりがありません。それに、少なくとも、具体性を持って政策を示した3党に話を限れば、特に問題とすべき部分はないだろうとも感じています。

 ちなみに。極めて個人的な感覚で言えば、昨年も触れた通り、私は街頭犯罪に治安上の脅威を感じております。路上強盗や連れ去り、通り魔、動機不明あるいは衝動的な暴行・傷害などなど。それと、次が組織的な盗犯・強盗犯。特に住宅を狙ったやつです。

 前者の街頭犯罪というやつは、「行きずり」という犯罪の性格上、従来の刑事捜査でなんとかなるとは到底思えません。怨恨の筋で関係者を洗っても、容疑者は出て来ないでしょう。となると後は足で稼いで目撃者を探す事になりますが、今の世の中、それでうまく行くかどうか。街頭犯罪対策として有効だと思うのは、人の目がある事。警察に限っていえば、警察官が常に居るというイメージが醸成される事。それは交番にいつも警察官が居るのでもいいし、あるいは通報後の緊急配備によって網掛けが広域かつ緻密になされるのでもいい。これはひとえに地域部門の仕事になります。

 後者の組織的盗犯・強盗犯については、外国人犯罪組織の関与が最近言われています。私は幸いにして被害者になった事がなく、そこまで実感するには至っていないのですが、住宅を狙った悪質な盗犯・強盗犯の存在そのものには大いに脅威を感じます。組織犯というやつは、職業犯罪人みたいな存在で、警察がいてもやるやつはやる。こうなるともう、検挙してもらうより他ありません。刑事警察の出番です。あと、本当に外国人犯罪組織がからんでいるなら、入管にも出番があります。

 こうした私個人の感覚と、発表された諸政策を比べてみれば、与党および民主党の場合は政策の内容・対策の方向性がおおむね合致します。私の主観に限った話ですけれども、好意と期待を持って政策を支持する事ができます。政策が妥当かどうかという問いに答えるのは難しいですが、妥当と信ずる、と答えるでしょう。少なくとも、上で言った通り、大きな問題は見当たらない。

 

 改めまして、全体通してみてぼんやり考えてみますに。ここ数年「二大政党化」がいわれておりますが、政策集にも何となくその傾向が見えて来ているような気がします。自民・民主の大政党は、なんだかんだ行って理念から現実の対策まで、一通り盛り込んで来ます。ちゃんと形になってます。しかし他の政党になると、ぽつぽつと欠けた部分があると感じます。いまいち現状認識の分からない公明、逆に具体策に欠ける共産、社民に至っては手抜き。私は党員じゃないですから、党の講演会なんか行かないし、機関紙も読みません。間欠的に発表される「我が党の提言」みたいなやつも見ない。そもそも存在すら気付かなかったり。そういう人間にとって、政策集は、投票先を判断するほぼ唯一の具体的材料です。後は、報道で言われている内容と個人的な漠としたイメージしかない。党員でもない人間の票を本気でかき集める気なら、どうか政策集を大事にして下さい。……と言ってもまあ、今の私は治安の項しか読まない訳なんですが。

 平成16年参院選を取り上げた私の駄文は、これで終わりです。我ながら勝手放題言ったものだと改めて苦笑中。お目汚しにてすいません。しかも選挙終了後の発表なんで、参考にも何にもならんですね。とりあえず、ねた半分に楽しんでもらえれば幸いです。

 

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