塀の外の刑務官

 

 刑務官の仕事場は塀の内側だけではありませんよ〜、という話です。もちろん、塀の内側の仕事がメインである事に違いはないんですが、外でも、行刑と関係あるところでは少々動いてらっしゃいますという事で。

 刑務官の仕事は行刑施設を維持管理し、そこで身柄を預かる事になった人物の管理をする事です。この「人物の管理」は、なにも施設内部での管理に限られる訳ではないのでした。

 例えば検察が容疑者を起訴すると、起訴された容疑者は刑事被告人となります。ここで、検察が被告人の勾留を請求し裁判所がそれを認めると、その身柄は拘置施設に移されます。以降、その身柄を預かるのは法務省矯正局となり、裁判所にいても開廷中以外は手錠付き、しかも常に刑務官が警備について来るのでした。

 裁判が終結し実刑判決が言い渡されると、被告人は受刑者となり、本格的に刑務官のお世話になることになります。この場合、判決執行のために検察官が収監指揮書というのを書きますが、これに従って受刑者の身柄を引き取り刑務所まで護送していくのも大体刑務官です。護送中は逃走を警戒して手錠がはめられ、場合によっては捕縄も併用することがあります。

 このように、行刑の側で身柄を預かる人物については、施設の外であっても管理の手がしっかりついて来ます。勾留決定だとか実刑判決だとかが出た時点から法的には行刑側が身柄を押さえている訳で、たとえ施設の外であってもそれは変わりませんと。手錠かけられたり刑務官がついて回るのは、そういう事の具体的現われなのでしょう。ちなみに、たとえまだ判決の下っていない未決勾留者であっても、身柄は行刑機関が預っていますから、逃げれば当然刑務官から追われます。その場で取り押さえられなかったとしても、本編で書いた通り48時間以内なら刑務官が自力で連れ戻せる仕組みになっております。

 こうした法廷うんぬんの他にも、在監者を他施設へ移送する場合の見張り。あるいは最近では少なくなりましたが、刑務所外の工場や農場、工事現場などへ受刑者が出役する場合の見張り。もしくは怪我や病気の在監者が施設外の病院へ入院する場合の見張り。こういう場面でも、刑務官は塀の外で仕事をしている訳です。まあ、全然関係ない第三者にまで権限を及ぼしている訳ではなくて、あくまで施設外の在監者に対する権限行使にとどまるんですけどね。

 ただ、塀の外でも動けるとは言っても、武器の持ち歩きと使用は制限されておりまして、さすがにここら辺は塀の内側とは違います。塀の外で武器の携帯と使用が認められるのは、受刑者の施設外作業を見張る場合、及び受刑者移送の際の見張りに限られています。前者の場合、広大な農場や伐木場など看守の警戒区域が広大に渡る時は拳銃の他小銃の携帯も許されます。後者の場合は、拳銃の携帯のみ許されます。

 

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