配達還付不能郵便

 

 配達できない郵便物は、差出人に返還しないといけません。しかし差出人住所が書いていない等の理由で返還もできない郵便物がありまして、それが配達還付不能郵便です。

 世にいう郵便事故の半分くらいは郵便物の不着だと思われますが、着かなかった郵便物は大体「配達還付不能郵便物」と化してるんじゃないですかね。これらの郵便物は、もともと住所や氏名の記載が不十分か、あるいは書いてないか、あるいは汚れて読めないなどの理由から配達も還付もできないというものです。そこで郵政公社において中身を開いて見ます。それで配達なり還付なりができれば世話はないんですが、それでもダメとなると公社の側で保管する事になります。郵便法54条の規定です。

 郵便事故の発生件数は年間およそ8万件といいます。これらのうちどれくらいが「配達還付不能郵便物」関連なのかは分かりませんが、仮に半分としても4万件。1件1通としても4万通。1日当たりに換算すると100通を超えます。うへえ(苦笑)。もちろん年間これだけ発生してるという訳ではなくて、あくまで計算例でしかないんですけど。それでも、毎年相当数の配達還付不能郵便物が発生しているとは言えるかと思います。

 これらの郵便物は郵便局などで保管して、持ち主が名乗り出るのを待つ訳ですが、いつまでも保管してくれるものでもありません。基本的に葉書や封書などは3ヶ月で廃棄、小包など金銭的価値のあるものは1年間保管し、その後は売却して代金は公社の収入になります。

 この配達還付不能郵便物が治安云々とどうからむかと言いますと。これらいわゆる事故郵便物の調査で監察官補は大忙し、というのもありますが、それだけではありません。あまり例は多くないようですが、時折郵便物の中から犯罪の香り漂う品物が出てくる事もあるようです。

 配達や還付ができないのは差出人や宛て先人の住所氏名が不正確or読めないor書いてないせい、という訳で、封書や小包の場合、中身を開いて手がかりを探す事が許されています。この時、郵便物の中から「郵便禁制品」が転がり出る事がたま〜にあるそうなんですね。郵便禁制品とは、郵便法14条によると

  1. 爆発性、発火性その他の危険物
  2. 毒・劇薬、毒・劇物
  3. 生きた病原体や、それが付着したもの
  4. 法令にもとづき移動や頒布を禁止されたもの

を指します。まあ、毒物や危険物を郵便で送っちゃいけないというのは分かります。4の移動と頒布を禁止されたものというのが、なかなか。該当するものとしては、裏もののえっち本やビデオなんかが挙げられますかね。これらは児童ポルノ規制法、刑法、軽犯罪法、などに引っかかりますので、郵便で送ると当然ながら郵便法違反になります。

 どこからどこへ届けられようとしたのか分からない、そういう小包がある時、監査本部に届けられた。中身を開けてみると、そこから出てきたのは何と… とか。郵便法違反事件は監察官の領分ですから、これ以降の捜査に監察官が参加する事もなくはない、かもしれません。そこでも捜査手法も、もしかして郵政ならではのものだったりするんですかねえ。

 そんなこんなで。以上、ショーン・マグレディ著『郵政捜査官』からの受け売りねた(爆)「配達還付不能郵便」でした。

 

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