お前がしないなら俺がやる・民間編

 

 裁判の結果、債権者にサービスやら業務やらをやってあげる=「なす債務」の履行義務を負った債務者。その債務者が裁判の結果を無視しやるべき業務をやらないとき、どうすればいいか……という話です。

 本文でも書きましたように、こういう場合、債務者本人がやらないからといって執行官が出張る事は許されず、本人に代わって誰か別の人に義務を履行してもらう「代替執行」という手続きをとります。

 具体的には、債権者が、元の判決を出してもらった裁判所に申し出て、第三者に裁判結果を実現させてよい、という決定を出してもらいます。この第三者については、裁判者がこれこれの者と指定する場合もありますし、決定をもらった債権者が自分で決める場合もあります。裁判所が指定する場合、裁判結果を実現する第三者として執行官を指定する事が多いようですね。ともかく、この決定が出ると、後はその「第三者」が自分で采配を振って裁判結果の実現に取り掛かります。

 例えば土地明渡しに伴い、土地整備のためにそこにある立木を伐採し建物を撤去し、更地にする。建物引渡しに伴い、建物内を清掃し消毒し、あるいは内部の施設を元に戻す。などなどです。これらは指定を受けた人物が1人でやる必要はなく、「補助者」として他人から手助けしてもらったり業者を呼んで業務委託したりしても一向構いません。

 また代替執行は、執行への抵抗があった場合、執行官に要請して抵抗を排除してもらうことができます。妨害排除に用いられる実力は必要最小限のもので、具体的には本文で書いたのと同様です。とおせんぼする人間を押し退ける、座り込みする人間をゴボウ抜きする、建物の中に居座る人間を外へ連れ出す、障害物をどかす、開かない鍵を壊す、そんなところ。まあかわいいものです。

 しかしまあ、形式はどうあれ他人の身体の自由を制限する行為は勝手にやってよいものではなく、法がそれを認める必要があります。代替執行ではそれが認められている訳で、これぞまさしく "強制" 執行。執行官の陰は薄いんですが、強制執行関係ってことで、含めてみました。

 なお、こうした代替執行にかかった費用は、すべて債務者の側に請求されます。

 

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