間接国税取締担当国税庁事務官

 

 すぐ前で紹介したマルサと似た内容なんですが、少し違います。

 国税犯則取締法によると、同法による取締りは、「間接国税」と「間接国税以外の国税」で内容が異っています。間接国税とは、いわゆる間接税の形式を取った国税という事ではなく、その中でも特に法令上指定をされたものを指します。平成15年3月現在、国税犯則取締法にいう間接国税に指定されているのは、以下の国税です。

  • 課税貨物に課される消費税
  • 酒税
  • たばこ税
  • 揮発油税
  • 地方道路税
  • 石油ガス税
  • 石油税

 「間接国税以外の国税」の場合、国税犯則取締法によれば、裁判所の許可を得て強制調査を行い、調査の結果犯則の心証ありとなると検察に告発しなければなりません。しかし、「間接国税」の場合は、少々事情が異ります。

 納税義務者と税負担者が異るという間接税の特徴上、間接税は脱税が行われやすいんだそうです。…具体的にどう脱税が行われるのか、私には想像つかないのですが(売上をごまかすために帳簿書き換え、などというものではない?)、ものの本にはそう書いてあります。そのため、国税犯則取締法は、間接国税の犯則摘発につき2点の例外を設けました。

 第1は、現行犯則に関する規程です。犯則を現に行うか、あるいは現に行った直後に発覚した場合で、裁判所の許可を得る暇がないと認められる時、収税官吏は裁判所の許可を得ず強制調査を行う事ができます。その場で直ちに、犯則調査のための臨検・捜索・差押ができます。

 第2は、行政上の通告処分に関する規程です。間接国税の犯則にあっては、強制調査の結果犯則の心証を得ても、告発が原則ではありません。犯則嫌疑者の居所が不明か、逃走あるいは証拠堙滅の恐れがある場合でなければ告発されません。通常の間接国税犯則嫌疑者は、調査終了後、国税当局から罰金の納付通告がなされます。通告を受けて罰金を収めればそれでよし、収めなければ、検察に告発して司法処分を受けるのです。

 こうした規程により、国税当局は、間接国税の脱税は現認し次第すみやかに調査着手ができ、かつ行政通告処分という "ソフトな" 手段でもって司法処分よりもスムーズに事件を片付ける事ができます。間接国税として挙げられているものの中身からも窺えるように、これらの違反というのは、中小の商売人が出来心でついついやっちゃう、という性質のものが結構多いようです。酒屋、たばこ屋、ガソリンスタンド、具体的にはその辺りでしょか。なので、その場でさっと摘発し、反省したなら前科をつけずにお金で済ます、と。こういう事らしい。

 国税当局内でこうした違反を摘発しているのは、マルサではなく、間接税の収納を担当している部門です。各国税局の間税部監視課というところが長らく担当していたようです。監視課が置かれたのは昭和25年5月の事、当時つとにひどかった酒の密造取締りを主たる目的として設置されました。その後昭和49〜52年にかけて、監視課は監視部門と名前を変えます。やがて同部門は国税局調査部・調査査察部に酒税/間接諸税担当部門として吸収され、マルサとはまた別に間接国税の税務調査と取締りを行っているみたいです。国税査察官のような専門官がいるのかどうかは不明で、担当者が全国規模でどのくらいいるかも分からないんですけれども。ともかく、こういう事になっています。

 この間接国税取締りについてのエピソード、1点だけ。

 
 
主要参考資料;
『国税庁二十年史』 編:国税庁 刊:財団法人大蔵財務協会 1969
『国税庁三十年史』 編:国税庁三十年史編集委員会 刊:国税庁 1979
『国税庁四十年史』 編:国税庁四十年史編集委員会 刊:大蔵財務協会 1990
『国税庁五十年史』 編・刊:国税庁 2000

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