皇宮護衛官

 

 警察庁附属機関であり皇居内部に本部を置く皇宮警察は、天皇家の一族やその御所を護衛・警備する警備専門の警察機関です。ガードマンだから呼び名も "護衛官" なのであります。人員は、平成6年の段階で918人、となっています。

 憲法上天皇は日本国民統合の象徴である、とされてますから、その護衛・警備には専任の機関が必要と考えられた……というような設置の理由がモノの本には記述してあります。が、戦後出来た新しい機関なのかというとそんな事はなく、おおもとは明治19年に設置された宮内省皇宮警察署だから、歴史ある機関が単に名前を変えて残っただけとも取れますね。

1.皇宮警察のあゆみ

 皇宮警察の由緒由来を少し述べますと、おおもとは、すぐ上でも触れました宮内省皇宮警察署です。宮内省は今でいう宮内庁、皇室関係の一切を(あと、加えて神道関係の行政も)仕切っており、従って皇宮警察についても宮内省の手の内にありました。ただ、もう少し細かく言うと、当時の宮内省皇宮警察は、現在の皇宮警察ほどに護衛・警備を専担したものではないようです。各地に散在する離宮の警備は皇宮警察が担当しましたが、皇居の警備は、皇宮警察と陸軍の近衛師団が合同で実施していました。また皇族の身辺警護も、とりわけ天皇と直近親族の場合、皇族の身辺の世話や宮中の使役一般を担当する侍従職・内舎人が本来担当するものであり、皇宮警察の要員が身分兼務、ないしはその協力を得て護衛を実施する形式になっていました。

 皇宮警察は、当時の宮内省主殿寮に設けられました。従来主殿寮中には、宮門の開閉及び出入りの取締りを担当していた門監、消防を担当していた消防監、といった職員がいたのですが、彼らをまとめて新たに皇宮警察という組織に作り上げたのです。皇宮警察署は明治憲法制定後の明治40年に皇宮警察部となり、さらに大正に入って主殿寮より独立、大正10年に宮内省大臣官房皇宮警察部、となりました。

 ところで。後でも改めて触れる事ではありますが、この当時の皇宮警察の要員(皇宮警察官、と呼ばれました)は、司法警察事務を扱うものではありません。もともとの始まりは主殿寮の門監・消防監、その任務は門の開閉や出入りの取締り、消防、といったもの。これは皇宮警察に改まってからも基本的に変わりませんでした。この当時、皇宮警察は、警察の名は冠していても犯罪捜査の権限はなかったのです。

 時代の風潮と言うべきなのか、戦前は「聖域に犯罪なし」と言われ、いやしくも天皇陛下の御身御住まいたるところ罪咎の汚れなどあろうはずなし、と見られていたそうです。皇族が犯罪行為に及ぶなど考えられなかったのはもちろん、神聖にして犯すべからざる天皇と皇族に対し「臣民」が犯罪行為をはたらく事も考えられず、よって皇宮警察には犯罪捜査権が与えられなかったようです。それはそれで凄い考え方ですが、それで問題なくまかり通ってしまう辺りもまた凄い。(^^;

 警察とは名乗るけれど、警察ではない。武器を持つ事はできる(剣、後に銃を追加)けれど、犯罪捜査はしない。当時の皇宮警察は、警備と警護と消防を掌る、まさに正しくImperial Guardであった、という事です。

 時代は下って昭和になり、戦雲がたなびくようになると、それにつれて皇宮警察も変わって来ます。昭和16年、宮内省に警衛局が新設され、皇宮警察部は大臣官房からここに移りました。この後、戦争を挟んで、現行の皇宮警察ができるまでの動きは極めて急激でめまぐるしいものです。

 敗戦直後の昭和20年9月、すなわち終戦の翌月、警衛局は廃止され、新たに宮内省に禁衛府が設立されました。禁衛府を構成する主たる機関は皇宮警察部と皇宮衛士総隊、この内皇宮警察部は警衛局からの移設です。皇宮衛士総隊は、旧近衛師団の兵士を選抜して編成された、皇居警衛のための特別な機関です。

 余談ですが、禁衛府皇宮衛士総隊は、およそ1,700名もの人員を抱え、さらに旧近衛師団から装備までも受け継いでいました。近衛師団といえば、戦前は陸軍の精華とされ、人員も装備も優秀なものが集められていたところです。そこからさらに精鋭を選び出し、部隊編成を取り、優れた装備を引き継ぐ。という訳でこの皇宮衛士総隊、皇居警衛を名目にした再軍備の隠れ蓑なのではないか?将来の陸軍復活に向けた芽か?と見られる事もありました。……まあ、実際どうだったのかは深く追求する事はしませんけれども。ちなみに、こうしたいきさつから、一部の研究者やマニアさん、あるいは陰謀論大好きな人の間で、ちょっとばかり名の知れた存在。

 禁衛府の歴史はごく短く、設立7ヵ月後の昭和21年3月には廃止されます。皇宮警察は再び移動し、宮内省皇宮警察署となりました。さらに同年末、日本国憲法の施行と宮内省の縮小に伴い、皇宮警察は宮内省から内務省に移される事になりました。明治以来存続してきた宮内省皇宮警察はここに消滅し、そして組織を改め新たな歴史を歩み始めます。

 昭和22年、警視庁に皇宮警察部が置かれました。皇室関連機関としてではない、一般の警察組織に近い存在としての皇宮警察の誕生です。皇宮護衛官という名称もこの時定められました。

 翌昭和23年3月、前年制定の警察法が施行されるに及びまたもや皇宮警察は異動し、国家地方警察本部皇宮警察局となりました(当初は皇宮警察府と称していましたが、6月に皇宮警察局と改名します)。この時制定された警察法は、現行のものとは異なり、旧警察法と称されるものなのですけど、この法律中では、国家警察と自治体警察をかなり細かく分けていました。ここで、警視庁は自治体警察の一つに過ぎなくなったため、皇宮警察は国家警察たる国家地方警察に移されたのです。また12月には、皇宮護衛官に司法警察権も付与されました。

 ところで、数ヵ月おきに頻繁に移動や改称を繰り返す間、皇宮警察の職務執行に関し、法律上の疑義や齟齬も一部生じてきていました。後で改めて書きますが、とりわけ皇宮護衛官が武器を携帯し使用する根拠が、いささかはっきりしないものになっていました。もっとも実際は、皇宮警察は一般警察に準ずるとして武器を携帯し、かつその使用を予定した取扱規定も定めています。

 現在の皇宮警察が誕生したのは昭和29年6月、現在の警察法施行に伴い、皇宮警察は警察庁に附置されました。法律上正式に武器の携帯権が与えられたのも、この時のことです。

2.皇宮警察のいま

 さてこの皇宮警察の皇宮護衛官、警察官ではありませんが一種の警察庁職員という事で、階級もあれば武器も持ち、警察法にもとづき特別司法警察職員としての権限も与えられている。階級は、別表にて示しております……が。これって、警察官の階級名の上に「皇宮」を付けただけで、あんまり格好良いとは思えないんですけどねえ。(失礼!)

皇宮護衛官の階級
皇宮警視監
皇宮警視長
皇宮警視正
皇宮警視
皇宮警部
皇宮警部補
皇宮巡査部長
皇宮巡査

 彼らが司法警察職員として捜査する犯罪は、警察法に定められているところによると、

「天皇及び皇后、皇太子その他皇族の生命、身体若しくは財産に対する罪、皇室用財産に対する罪又は皇居、御所その他皇室用財産である施設若しくは天皇及び皇后、皇太子その他皇族の宿泊の用に供されている施設における犯罪」

であります。ちょっと見長くなりましたけど、要するに捜査権の有無は、犯罪の種類というよりは、犯罪の対象のいずれか・犯罪の行なわれた場所のいずこかによって決まるんですね。

 ところで、先にも述べましたように、皇宮警察そのものは戦前から長々と存続してきた組織ですが、護衛官に犯罪捜査を行うための司法警察権が与えられたのは、戦後昭和23年12月の事です。戦前の皇宮警察官に捜査権がなかった理由は、既述の通りです。まあ実際は、当時であっても犯罪行為が決してなかった訳ではなく、皇居への不法侵入だとか、天皇暗殺未遂だとか、時折発生しています。こういった時、皇宮警察が犯人を押さえた場合は、所要の取り調べをした上で一般の警察に引き渡していました。自前の捜査はしていません。どうしても捜査権が要るとなれば、臨時に一部の皇宮警察官に一般の警察官身分を兼務させ、捜査権をもたせる、という手段を取っていました。

 では、その皇宮護衛官の仕事内容をもう少し詳しく見てみましょう。警備・護衛が仕事とあって、勤務地はいずれも御所やら何やらがあるところです。既述のように皇宮警察本部は皇居内にあり、本部内に警備部と護衛部、警備部の下に護衛官派出所3、また他に護衛署4があります。

警務部:
…詳細略
警備部:
;警備第一課
…警備企画、司法警察事務
;警備第二課
…警備指導、災害防止、警察通信、各御用邸の警備
;葉山護衛官派出所
;那須護衛官派出所
;須崎護衛官派出所
護衛部:
;護衛第一課
…天皇皇后の護衛・国賓等の皇居参内の際における護衛
;護衛第一課
…皇太子同妃及び内廷の皇族(皇后を除く)の護衛
;護衛第一課
…その他の皇族の護衛
;侍衛官
…天皇及び皇族の護衛の指揮
坂下護衛署
吹上護衛署
赤坂護衛署
京都護衛署

 護衛署の所在地が皇居や離宮・御所であるのは一目瞭然ですね。護衛官派出所は少し分かりにくいかもしれませんが、いずれも宮様の御用邸のある所です。ここに護衛官を張り付けておいて、24時間目を光らせる。これが警備です。

 この警備関連では、緊急事態に備え特殊部隊「のようなもの」も編成されているらしい。お世話になっている方から教えていただいたところでは、皇宮警察には「皇宮警察本部特別警備隊」なる部隊が置かれているということでした。なかなかなねたなので、細かいことは後述。(笑)

 次は護衛です。皇宮護衛官ですから、天皇及び皇族の向かう所は、たとえ外国であろうともついて行って護衛します。また国賓はじめ賓客が皇居に参内する際も、護衛官が護衛につきます。「特命全権大使・特命全権公使の信任状・解任状捧呈式の送迎」にも、護衛官がつきます。最後のは分かりにくいですが、これは外国の大使・公使が、日本への着任に際しては信任状を、離任に際しては解任状を天皇に差し出しその認証を受けるために皇居へ参内する時、護衛につくという事です。

 天皇皇族の護衛は、実際の身辺警護を目的としたものです。国賓参内の護衛も、かなりそれに近い。しかるに捧呈式送迎の際の護衛は、実際の身辺警護はあまり目的とはなっていないようです。というのもこれは儀礼的護衛、「儀衛」というやつで、皇室用馬車に乗った当人の前後を正装騎乗した護衛官が固めるというものなんです。ただのパレードにしか見えませんが、でも立派な任務なんですねぇ。

 エンペラーともなると、こうした儀衛のようなあまり意味のなさそうなセレモニカルな事、いわゆる儀式も大事なようでして。実はその儀式の一翼を担うのも護衛官の大事な仕事であったりします。基本的なところでは、皇居正門の警備などまさにそれでしょう。門柱のところに護衛官が正装の上直立不動、紫がかった制服に、金筋入りの制帽、白手袋、ラインヤードは深紅ときたもんです。定刻になると、格式張った護衛官交代式もある。

 皇居周辺は警備派遣の機動隊員と頑丈な車止めでガードしてあるから、極端な話護衛官が立っていなくともいい訳です。それでも警備したいのなら、立っとかずに門の内側で監視カメラの画像見てたっていい。しかしイギリスバッキンガム宮殿やロシアのクレムリンに衛兵交代式があるように、皇居にもそれがないと「風雅さがない」んですねー。いや、大変だ。ちなみに、この皇居正門での「警備」を担当しているのは儀仗隊で、最初は坂下護衛署警備課、後に本部警備部警備第二課の外勤教育隊(現在の皇宮警察本部特別警備隊)に移りました。勤務要綱には、ずばり「儀容を整える事に重点をおき、警戒警備活動は第二次的とする」と定めてあるそうです。

 この他皇宮警察は警防、すなわち初期消火も任務としていて消防車も持っているんですけど、こちらは本題と関係ないんでパスであります。

 その本題、護衛官の犯罪鎮圧・捜査について。権限は前に述べた通りです。この権限に基づき実際に護衛官が現行犯を含め犯罪を検挙した事例が年間どれくらいあるか……なんですが。平成6年度中に彼らの手によって検察庁に送致された被疑者の数は「1人」。新聞にも名前が出てきませんし、まあ、多くてせいぜい年に数件といったところではないですか。

 しかし、皇室関連行事でのパレードなんかでの「駆け寄り」「投石」騒ぎは結構ありますから、仕事ある時はそれなりにあるんでしょう。多分。

 締めは、皇宮護衛官の部隊と武装についてです。まずは、皇宮警察本部特別警備隊について。警察に集団警備用の部隊があるのに習ってか、皇宮警察にも集団警備部隊が編成されている。いや、教わって初めて知りました。

 皇宮警察に集団警備部隊が初めて設置されたのは、昭和43年です。その年、警備部警防課(現在の警備第二課)に外勤教育隊が設けられました。外勤教育隊設立の主な目的は、新任護衛官の教育と、非常時における警備実施でした。隊は3個小隊編成の1個中隊から成り、隊員はおよそ100名。基幹隊員と教導隊員に分かれ、基幹隊員に任命されるのは皇宮警察学校出たての新任護衛官、教導隊員に任命されるのは実務歴1年以上3年未満の護衛官です。小隊の下にある各分隊は基幹隊員・教導隊員の混合編成であり、ちょうど、先輩格の教導隊員が分隊内の基幹隊員を指導するような形になっていました。隊員は原則独身、全員隊寮に住み、緊急時の出動に備えていました。

 この外勤教育隊が、後年、皇宮警察本部特別警備隊へと発展します。現在、同隊は皇居内にある皇宮警察本部警備部警備第二課に置かれています。隊は新任護衛官の教育の場となる他、護衛官によって編成される唯一の集団警備部隊として非常時の警備を実施、また隊内に儀仗隊を置き、護衛部と協力して儀衛も一部行ないます。既に書いた外国大使・公使の儀衛の他、皇族が亡くなった際には正装して出棺の列を護衛します。

 警備隊員は通常の護衛官業務と警備隊業務を兼務し、通常業務のない勤務日に警備隊員として勤務します。兼務員が空いた日に勤めるということで、緊急時/訓練時のみ要員招集する非常設部隊とは違いますが、かといって専任要員から成る常設部隊とも微妙に趣が異なります… まあ、皇宮警察自体がそもそも大きな組織ではないので、この辺りは人員をやりくりする関係上致し方ないところでしょう。なお、警備隊配属が決まった護衛官(大抵は新任の若い護衛官です)は警視庁第一機動隊に派遣され研修を受けるといいますから、それなりに気合い入っていますね。

 続いては護衛官の武装についてです。護衛官には、警察法にもとづき、犯罪捜査等の職務遂行のため小型武器所持が認められています。皆さん、今度皇居へ行かれた時は、正門のところで直立不動の姿勢をとっている護衛官の右腰を注視してみましょう。

 護衛官の持つ銃の具体的な種類は、おなじみニューナンブM-60、お巡りさんが普通に持っているあれと同じです。皇宮警察では昭和44年から導入を開始。それ以前は、ブローニング(戦前から使用。側衛員用)、チーフスペシャル(昭和27年より導入)、S&W38レギュラー5in(昭和31年より導入)を使用していた、との事です。

 なお、ここで挙げたのは拳銃のみですが、実際に皇宮警察が持つ事ができる「小型武器」とは、なにも拳銃だけとは限りません。平成14年5月に制定された国家公安委員会規則「警察官等特殊銃使用及び取扱い規範」では、警察官のみならず皇宮護衛官への準用もうたわれています。ここでいう特殊銃とは、具体的には狙撃用ライフル銃や、機関けん銃と呼ばれるサブマシンガンの事を指します。皇宮警察の側は、これら特殊銃保有の有無について何もコメントしていませんが、実際には平成14年に機関けん銃を導入しています。平成16年4月に、皇宮護衛官が射撃訓練時に機関けん銃を誤射してしまう事件が発生(平成16年9月、新聞報道)し、機関けん銃保有の事実が判明しました。

 銃の使用についてですが、過去の発砲の有無は確認できませんでした。でも、多分、実務上撃った事なんてないんじゃないんでしょうか。使用に際しての条件は警察官と同様、警察官等職務執行法の準用を受けます。

 あと、これは余談。現在でこそ警察官同様の武器携帯権・使用権並びに各種の権限を持つ皇宮護衛官ですが、こういう形になったのは平成12年12月の警察法改正以降です。それ以前は、護衛官に対し、警職法の適用はありませんでした。このため、実務上有形無形の不都合があったそうです。

 警職法が制定施行されたのは昭和23年7月の事。当時はまだ旧警察法時代です。ところでこの頃、警察官の武器携帯に関する規定は警察法中にはなく、警察官は警職法を根拠として武器を携帯していました。すなわち、同法では警察官等(※当時の国家地方警察の警察官・自治体警察の警察吏員)による武器使用が予定されているにより、ここから警察官等による武器携帯も可能と解される、という解釈です。しかるに、皇宮護衛官に対する警職法の適用は(まだ)ない。では、この当時の護衛官の武器携帯の根拠は何だったのか?

 これは、よく分かりません。昭和22年以降、警察官の服制に関する規則が皇宮護衛官にも準用される事になるんですが、この警察官の服制規則中では、警察官は拳銃を携帯する旨定めてあるので、これをもそのまま準用し護衛官も拳銃携帯、という事にしていたらしいです。とはいえ、これは行政機関の定めた規則の中での事、法律の段で見てみると、どうにも根拠薄々です。これは、昭和29年の現行警察法制定施行により、解決しました。

 現行警察法の施行で昭和29年以降武器は持てるようになりました。が、その使用基準を定めているのは警職法です。武器は持っていいけど警職法は適用しないのでは、どう使ったらいいんでしょう? 答えは、正当防衛・緊急避難の場合=自己や他人の生命身体を守るために万やむを得ない時にのみ撃ってよろしい。だから、事をし損じて逃げる容疑者に向かって護衛官が「止まらんと撃つぞ!」なんて言って、あまつさえ撃ったりすると、これは違法行為となっていたはず。

 あるいは、これは武器がらみの話ではないのですけれども。警察官等職務執行法の適用がなかった、という事は、警察官に認められている犯罪の制止や職務質問の権限もなかった、という事です。もちろん、強制に渡らない任意の活動であれば特段根拠なく実施できたのでしょうが、しかし根拠の面から見て警察官には明らかに劣ります。職質権抜きでは、よほど怪しい相手でない限り、「もしもし、ちょっとそこの人?」と呼び止めるのは難しそう。

 まあ、警職法適用がかなった今となっては、半分笑い話のようなものなのですが……それにしても。警察ライクではあるけれど警察そのものではない、という組織の性格上、警察関係法規の完全なる適用を受けるものではなく、そのせいでいろいろ引っかかりが多かったようですね。護衛官はあくまで「護衛」官であるから、とにかくそこに居て体を張るのが仕事で、事前の予防だとか検挙だとか細かい事は本業任せ、という事だったのでしょうか。それでもつつがなくやって来られたんですから、ある意味のどかな話ではあります。あるいは逆に見れば、今の日本は幾分物騒になってしまった、と……

 
 
主要参考資料;
『皇宮警察史』 編;皇宮警察史編さん委員会 刊;皇宮警察本部 1976
『戦後警察史』 編;警察庁警察史編さん委員会 刊;財団法人警察協会 1977

Special Thanks to: Julietさん、まさやんさん、ゴンタさん


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