福消警防調査隊

 

 火事が起こると、サイレン鳴らし赤色灯ひらめかせ、消防車がやって来ます。そうして消火と人命救助が始まります。しかるに本編でも触れたように、調査活動も同じくこの時から始まります。

 我が町福岡市の消防は、市内に7つの消防署を持っています。火事が起こると、消防本署やその下の出張所から、ポンプ車や救助工作車が来て消火活動などを行い、また指揮車がやって来て現場臨場した各消防隊をたばねる訳なんですが、この他にもう1つ、車体に「警調」と書いたちょっと特徴的な消防車もやって来ます。

 福消の7つの消防署には、必ずこの「警調」車が置いてあり、火事が起こると指揮車とペアで出動します。火事が収まって他の消防車が帰っても、この「警調」車は最後まで残り、乗ってきた消防官が現場でごそごそやっています。要するに、調査をやっているんですね。

 火災通報で消防隊が出る件数というのはうんざりするほどあり、新聞の地方欄辺りには毎日必ず1、2件は載ってます。しかしそれも氷山の一角で、新聞に載らないぼや程度のものまで入れると一体どれくらいの数に上るものやら… 消防本部の調査員がそれらにいちいち付き合っていては、何日もしないうちに首も回らなくなってしまうでしょう。まずは署レベルの調査を行い、それでダメなら本部にお願いする、というのは、合理的なやり方といえます。

 この消防署レベルの調査を、福消では「警防調査隊」が行っています。警調隊を編成しているのは各署の警備課警防係に属する調査員、乗っているのがかの「警調」こと警調ポンプ車です。ところで福消の組織一覧によると、消防署内には警備課・予防課及び各係がありますが、「調査」の名を関した部署は見当たりません。ために一瞬「署レベルの調査はしてないのかな?」と思いそうになるんですが、さにあらず。警備課内に警備係と警防係が別個にあるところがミソでした。なんて分かりにくい。(^^;

 こういう一見上の分かりにくさはありますが、火災となれば彼らも部隊編成を取って出動するのです。こういった現場での初期・基礎調査を担当する調査員というのは、普通は指揮隊に含まれるか、あるいは鎮火後も現場に残って再燃を警戒する残火処理隊に混じるものだと思っていましたが… 福消の場合は違うらしい。

 また彼らが乗る警調ポンプ車、調査用の車であることは間違いないのですが、ポンプの名を冠している通りホース等の消火用装備も積んでおり、乗務員はもちろん防火服着用、普通の消防車としてもある程度働けるように作ってある車両です。形状外見は、いわく言い難いのですが… 敢えて言うなら、救助工作車をコンパクトにした感じ(?)とでも言いましょうか。調査用の車両と聞くとワンボックスタイプだか普通乗用車タイプだかという辺りがイメージされるんですが、福消の場合このようになかなか凝ってます。

 警防調査隊は、火災が発生すると必ずやって来て原因調査を行います。彼らは消火に当たる部隊ではないため、現場では証拠の保全等の活動を行い、いわゆる火消しはしません。しかし、例えば最初に現場臨場したのが警防調査隊であったり、他隊が活動に支障を来した場合などは、臨時に消火活動に従事する事もあります。

 掘ってみれば結構興味の湧きそうな警調隊、専用車両に乗って、誤報だろうがぼやだろうが火事の臭いあるところには消防隊に付いて必ず出動し、しかも最後まで残って調査に怠りなきを期します。ただ惜しむらくは、はしごや救助といった "花形" に較べるといささか表に出なさ過ぎなところ。消防イベントでも、警調車にお目にかかる機会はまずありません。うぅむ、なんかもったいない…

 以上、福消警防調査隊を例に取った消防署レベルでの調査に関する話でした。この署レベルでの調査では解決困難となると、上部組織たる本部に調査をお願いする事になります。ただ、付言するならば、福消本部の調査部門である警防部警防課調査係には、専属の調査班のようなものはなく、調査活動はすべて署の警備課警防係で行います。

 

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