少年院法務教官

 

 ネンショーこと、少年院です。非行少年が家裁の少年審判で「送致保護処分」と決定された場合、児童自立支援施設あるいは少年院に送られます。児童自立支援施設については前項で触れました。本項では、少年院について触れます。

 少年院とは、一言で言えば、少年院法によって設置された矯正教育機関である、という事になります。ここに収容された少年の処遇に当たる職員が、法務教官です。まあ、「教育」機関ですからね。事務官でなく教官なのでしょう。

 鑑別所の項でも書いた事ですが、少年法の精神は非行少年の「更生」が基本となっております。よって、少年審判の結果送致されるのは矯正「教育」機関である少年院であり、そこでは送致された少年を保護収容した上、規則正しい生活を送らせつつ所要の教育を施す事になっています。少年院には大きく分けて初等・中等・特別・医療の4種類があり、教育内容は教科、職業補導、適当な訓練、などだそうです。教科というのは文字通りのお勉強で、義務教育過程のみならず、必要とあらば高校・大学・高等専門学校に準ずる教科も授けるといいますから、まさに教育機関。

 とはいえ、一方少年院が非行少年の矯正のための機関であることもまた異論はありません。少々古い数字ですが、昭和60年に少年院の数は全国各種合わせて56。8矯正管区のいずれかに所属しており、トップとして頂いているのも法務省矯正局になります。職員総数は同じく昭和60年の数字で2471名で、このうち法務教官は2044名です。

 さて、少年院における矯正教育を、受ける側は「強制的に収容され」「規則正しい生活を送りつつ」授けられる事になります。これは要するに塀の内側で秩序を守って生活しつつ勉強もしますと、そういう事になります。秩序を守らせるためには強制権が必要であり、少年院についてもその点例外ではありません。少年院法には、秩序維持のための強制権についても言及があります。実際に強制権を行使するのは、収容した少年の処遇に当たる法務教官である事が多いようですね。

 具体的な強制権の内容ですが、鑑別所の項目で書いたものと大体同じです。同じ法律・同じ条文に依拠している訳ですから、同じ内容になるのも当然と言えば当然。すなわち、収容した少年が逃走、暴行、あるいは自殺するおそれがある場合、院長の許可を得て手錠を使用することができる。使用できるのは金属製両手錠・片手錠、及び革手錠である。かつ、収容した少年が逃走した場合は、逃走後48時間以内に限って職員に連れ戻しの権限がある。ただし、48時間を過ぎたら裁判所から連戻状の発布を受けて連れ戻しを実施する。また、院長は警察官・児童福祉司その他の公務員に援助要請する事ができる。前掲連戻状は、警察官にこれを交付して連れ戻してもらう事ができる。まる。

 ざっとこんなところなのですが、ただし少年院独自の規定もないではないです。まず少年院は、基本的に「通り過ぎるところ」である鑑別所とは異なり、少年審判の結果送致される矯正機関、つまり「もう後がない」ところです。よってある程度の問題については自前でカタをつけられるように、収容した少年が秩序違反を行なった場合はこれに懲戒を課す事が認められています。懲戒は大きく分けて3段階あり、軽い方から順に

  1. 口頭での厳重な訓戒
  2. 成績の減点
  3. 単独室での謹慎(20日以内)

となります。2の成績減点とは、教科の成績を減点するという事です。ここら辺りには、矯正機関といいつつ教育機関らしさが漂っていますね。

 また少年院は、収容者の逃走、死亡、あるいは伝染病の発生などなど重大な事故が発生した場合、矯正管区長に報告する義務があります。鑑別所よりも管区本部との結び付きを強めてある訳で、この辺りは強制収容・矯正機関という色合いが強く出た結果という事でしょうか。緊急事態が発生した場合には、やはり矯正管区長による指揮統制がなされることになります。

 以上、少年院関連の強制権とはこういうものです、というお話でした。

 
 
主要参考資料;
『日本の矯正と保護 第2巻 少年編』 編;朝倉京一、佐藤司、佐藤晴夫、森下忠、八木国之 刊;有斐閣 1981
『現代行政法学全集20 矯正保護法』 著;吉永豊文、鈴木一久 刊;ぎょうせい 1986

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