海上警備写真コーナー


 その名の通り、海保の海上警備に関する写真コーナーです。具体的には、巡視船艇の武器及び各種警備用装備、そして特別警備隊に関する写真になります。もっとも、枚数は少ないしそこまでバラエティ豊かでもないのですが… 海上警備についてより具体的にイメージできるようになればと思いまして。参考までにどうぞ。


 
 海保の巡視船艇は、武装しています。しかしながら彼らが岸壁にて憩うとき、その船首あるいは船尾において、武装は船体と同じ白色の防水布で覆い隠されてしまいます。強力な武器をこれ見よがしに連ねた海上自衛隊の護衛艦とは異なり、海保の船艇は、純白の塗装が華やかさを醸し出す一方その武装はなかなか目立ちません。しかしながら、船体にとけこみなじんで見える防水布の覆いの下には、小粒ながら質の揃った武器が確かに装備されているのです。
 一等最初の写真は巡視船「ちくぜん」、平成12年夏、博多港中央ふ頭イベントバースにて撮影しました。右手の「操縦室」付きの銃は35mm機関砲、左手船橋直前の一段高いところにある銃が6銃身20mm機銃です。本文でも書いた通り、機銃・機関砲を1〜2種類、1基ないし2基装備するのが巡視船の標準的な武装スタイルです。2基装備する場合は、写真のように6銃身20mmと35mmをそれぞれ1基ずつ組み合わせて積むのが一般的です。
 ご存知の方も多いでしょうが、この「ちくぜん」、去る平成11年3月、日本海に出現した不審船に対し20mm機銃を用いて威嚇射撃を実施した船でもあります。まさに写真の20mm銃が、不審船に向かって火を噴いた訳です。数少ない「実戦」経験船、という事で、ご登場頂きました。
 
 
 35mm機関砲のアップです。写真の砲は巡視船「はかた」搭載の砲で、平成11年夏、博多港中央埠頭イベントバースにて撮影しました。この機関砲はスイスのエリコン社が開発したKDシリーズという35mm機関砲を基本とし、海保独自の改良を加えて船載化したものです。上掲「ちくぜん」の機関砲も同じものであり、現在海保で35mm砲といえばこれを指します。大型巡視船に広く搭載されている、ポピュラーな機関砲です。
 手前に乗員区画がある事からも分かるように、この砲は砲側に人が付いて操作します。照準も砲側の操作員が光学照準器を使用して行い、レーダーなどの射撃統制装置はありません。なべて人だのみという事で精密射撃は期待できませんが、「船舶」という割合に大きくて鈍速な目標を相手とするところから、撃つのにそこまで照準を絞る必要はないという事なのでしょう。もっとも、ちょこまかと動きまわる目標を撃つ時には少々苦労するような気もします。射撃モードは点射・任意・単発の3モードに分かれており、最大射程は約10kmに達します。点射とは、知ってる人は知っているバースト射撃、つまり1度の射撃操作で数発の弾を撃つ事ですが、具体的に何発発射されるのかまでは分かりません。任意とはいわゆる連射で、最大発射速度は1分当たりおよそ550発です。
 
 
 同じく、巡視船「はかた」搭載の6銃身20mm機銃のアップです。アメリカのゼネラル・エレクトリック社が開発した、「バルカン砲」の名でも知られる20mm機関砲JM-61を基本とし、やはり海保独自の改良を加えて船載化したものです。こちらは大型のみならず中型や一部の小型巡視船にも搭載される武器であり、おそらくはもっとも目にしやすい武装なのではないでしょうか。
 この銃も、見て分かる通り、砲側に操作員がついて照準と射撃を行います。その際操作員は銃の後方にある「肩当て」に両肩を付けた姿勢で撃つ事になる訳ですが、据え付け型とはいえ強い反動に耐えながら操作しなければならないため、スムーズな射撃や正確な照準はかなり難しそうです。射撃方法は連射しかありません。最大射程は約6km、最大発射速度はおよそ500発/分、原型機種の発射速度(最大で100発/秒、つまりは計算上6,000発/分)と比べると随分と抑えてある…とは本文にも書いた通りです。
 ちなみに、上でも書いた通り、平成11年3月の能都半島沖不審船事件の際に巡視船「ちくぜん」が威嚇射撃に使用したのはこの銃です。
 
 
 巡視船に続いては巡視艇です。海上警備では実際に警備実施の一線にて活動する巡視艇、その装備がいかなるものかといいますと。
 写真は巡視艇「みやづき」搭載の機銃です。撮影場所は博多港中央ふ頭イベントバースにある港務艇稽留区画で、平成12年夏に撮影しました。搭載してある銃は、アメリカのブローニング社が開発した口径12.7mmの機関銃M-2を元に、海保独自の改良を加え船載化した13mm機銃です。
 さて。ブローニングM-2といえば、銃身基部の放熱カバーと肉厚な銃身が特徴的ですが、御覧の写真ではその特徴は見出せません(写真自体少々ぼやけてみづらいものですけれども……)。写真の銃は、放熱孔のあるカバーが銃口直近まで延びており、また銃口はらっぱ型をしております。一見すると、M-2よりは、同じブローニング社製ながら口径7.62mmのM-1919A4のようにも感じられますが、さにあらず。教えて頂いたところによりますと、軽量銃身を装備したM-2である可能性がある、という事でした。ちなみに、軽量銃身を装備したM-2は主に航空用で、重銃身装備のM-2とは少し違った見掛けをしています。参考となるWeb Pageはこちら。↓
http://www.246.ne.jp/~miti-230/HTMLmemo/12.7mmA.html
 ところで、これは余談。巡視船艇が停泊する際、20mm銃や35mm砲には防水カバーがかけられるのが常であり人目には付かない…と上で書きました。13mm機銃の場合はさらに徹底していて、架台についている機銃自体を取り外してしまいます。その上で、船体据え付けの架台には覆いをかけ、機銃は船内なり庁舎の保管庫なりにしまい込んじゃいます。手入れのためだとか、錆対策だとか、理由は幾つか考えられるにせよ…それにしても徹底してます。ますますもって目立ちません。
 
 
 巡視艇「こちかぜ」に装備された、強行接舷用の防舷材の写真です。
 犯罪検挙のために容疑船へ移乗する…というのはよくあるケース。ところで別項でも書いたように、既に停船している船だけでなくまだ動いている相手船に強行移乗するケースも少ないではありません。停船命令に従わず逃走を図る、そのような容疑船に強行移乗する際に防舷材が用いられます。移乗のためにはまず接舷する必要がありますが、相手船がまだ動いている場合、巡視艇は船体をぶつけるようにして艇首を相手船に「こすり付け」ます。両船がこすれ合って接している間に、保安官が素早く乗り移る訳です。この際、艇首にクッションのような防舷材を付けます。防舷材は衝突の衝撃を吸収し、接舷した両船へのダメージを最小限に抑えます。また衝撃が吸収されることで、接舷したとき巡視艇が簡単にはじき返されるという事がなくなり、より確実に移乗できるようになります。
 また写真には映ってはいませんが、防舷材の他に巡視艇に装備される警備装備としては、操舵室の角窓に装着する保護用金網、及び操舵室屋上の手すり周りに装備される保護用金網があります。これらは主に海上デモの警備において、投石などから艇と乗員を保護します。
 
 
 強行接舷する艇に引き続いて、接舷した艇から強行移乗する人々です。写真は、海保第七管区、門司海上保安部配備の巡視船「くにさき」乗員にて編成されるところの、くにさき特別警備隊です。平成12年夏、「くにさき」が博多に来航し海上警備訓練に従事した際に撮影しました。ちなみに、これが私にとって生の特警隊初目撃でもあったりして。(^^;
 写真の特別警備隊員は、紺色のヘルメット及び出動服、黒いライフジャケットを着用し、ヘルメットには顔面保護用のバイザーと頚椎保護用の垂れを装備しています。着用しているライフジャケットは、単なる救命胴衣でなく防弾防刃仕様にもなっている優れもの、というのがもっぱらの噂。
 特警隊を称して海保版機動隊と呼ぶ人もいますが、なるほど、彼らの見た目は「ライフジャケットを来た機動隊員」といった趣です。ただ、特警隊の出動服は陸の警察機動隊のそれに比べて色が暗く見えます。またヘルメットの前面にはコンパスのマークが付いています。出動服の左二の腕とヘルメットの頚椎保護垂れ左下隅には、くにさき特警隊の部隊章が付いています。この辺に、海保らしさが漂って見えますね。部隊章は第七管区を示す数字の7をあしらってあるそうですが、写真ではぼやけてしまってよく見えません。(苦笑)
 
 
 写真に映っているのは平成10年初春、博多に米海軍艦が寄港した際、海上警備に出動した巡視艇「とびうめ」の姿です。写真で見える警備関係装備としては、操舵室の後方雨よけ屋根の下に並べられた3枚の盾があります。陸の警察が使っているジュラルミンの盾とほぼ同じものですが、盾の覗き窓の下に黒字で「海上保安庁」と書いてあるところが違います。
 シビアな警備にはならないという判断からか、盾の他に特段の警備装備は見当たりません。
 
 
 平成13年春、博多港中央ふ頭海保専用岸壁で撮影した、巡視船「みずき」の姿です。
 さてこの「みずき」、実は強行移乗の項で紹介した180t「ばんな」型6番船に当たります。つまり、海上警備の分野で今をときめく(?)捕捉機能強化型巡視船なのです。本船が博多に現れたのは平成12年7月、九州・沖縄サミットの蔵相会談が福岡で開催された時でした。当時「みずき」はその前月に竣工したばかりのぱりぱりの新鋭船、しかも新型装備が山盛り。そんな船を素早く投入してきたところに、海保の意気込みを感じたものです。
 加えて平成13年12月、本船は奄美沖不審船事件の際にも出動し、威嚇射撃を実施してその存在を広く知らしめました。当事件において、本船は不審船の船首部に対し20mm弾220発余を発射しています。
 船橋前の甲板には機銃と放水銃が装備されていますが、いずれも新型のものです。残念ながら、いずれもカバーをかけられてしまっているので、その真の姿を見る事はできないのですけど…。まず前方の、「銃身」が突き出した箱型「砲塔」が新型の20mm6銃身機銃です。全自動化されているので船内から操作が可能で、いちいち砲側に人が付く必要はありません。照準は船橋の赤外線暗視カメラと連動して行なう事ができ、夜間や悪天候下でも精密な射撃が可能となっています。かの不審船事件の際には、その能力を十分に発揮し該船に射撃を加えました。
 機銃のすぐ後方にあるのが同じく新型の放水銃です。従来の放水銃が船舶火災の消火を主目的としたものであるのに対し、この放水銃は取締対象船の抵抗を封ずるために使うこともできるよう仕様してあります。機銃と同じく全自動化され、船内から操作が可能になっています。
 船首部には防舷材がありますが、従来の巡視船艇が装備するものに比べて大型です。なお、装備位置が決まっているためか、船体色と合うよう防舷材を白で塗るだけでなく、船体のS字マークにかぶさるところでは同じようにきちんと描きこんであるところが、なかなか律儀。(笑)
 
 
 これはおまけ。平成12年夏、博多港で海保・県警合同の海上警備訓練が行われました。その際、「デモ船」の役に駆り出された巡視艇「とびうめ」の姿です。
 操舵室屋上手すり周りにある「デモ船」の幕がおちゃめさん。(笑)
 

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