その日の官邸

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 事件にせよ災害にせよ、発生の第一報というのはいつ入って来るか分かりません。なので、いつ何時情報が飛び込んでこようとも、誰かしら受け取る人間がいる態勢を取るところからすべては始まります。

 内閣の内閣官房には内閣情報官の下内閣情報調査室が組織されていますが、ここは内閣情報集約センターという施設を持っています。センターには内閣情報集約班5個班が交代で詰めており、24時間態勢で内閣に入る情報を処理しています。ここは内閣・官邸への情報伝達窓口のようなところで、関係省庁や自治体から官邸に上がる重大事件・事故等の通報は、ここが受け付けることになっています。

 情報集約センターが受け付けた一報は総理に通報され、同時に初動対応態勢の構築が始まります。官邸の地下にはその名もずばり「危機管理センター」という施設があり、ここが初動対応時における内閣の指揮所のような役割を果たします。

 まず、危機管理センターに内閣危機管理監と、これを補佐する内閣安全保障・危機管理室の面々が集まります。内閣危機管理監は、阪神大震災などを教訓に、内閣において特に危機管理に関する職務を受け持つものとして置かれた職員です。確か、警察庁からの出向職員(つまりは警察官)が就任し、内閣官房副長官と同待遇だったような。集まった彼らは、本格的な対策組織立ち上げに備えて閣僚や関係省庁との連絡・調整に当たります。

 一定以上の大きな事故や事件である場合は、関係省庁から官邸に駆けつける「緊急参集チーム」も危機管理センターに入り、さらなる情報収集を行います。チーム参集の具体的基準についてはよく分からなかったりするのですけど(苦笑)、例えば地震の場合は、震度5弱以上の地震が観測された時に参集することになっています。チームメンバーには各省庁の幹部(課長以上)が指定されており、専門的見地を交えつつ情報収集を行うわけです。

 この後、大した事態にならなければ、大事でなくて良かったなあ、ということで解散。そうでなくて大事であった場合は、大事件なら大事件、大災害なら大災害、その他ならその他に合わせた本格的な対策組織が担当の官庁に出来るはずですので、自身は官邸窓口として機能しつつ、対応措置をそちらに引き継いで行きます。

 こうした体制が実際の事件や事故の際にどう動いたか、以下では最近2、3年に起きた事例について簡単に一覧表にしております。

平成11年
能登半島沖不審船事件 3月23日 9時25分頃 不審船発見
18時10分 官邸対策室設置。(事件発生から約7時間後)
20時〜20時30分 (海保巡視船による威嚇射撃実施)
翌24日 0時45分 (海上自衛隊の海上警備行動発令)
東海村JCO臨界事故 9月30日 10時35分頃 事故発生
15時30分 官邸連絡室設置。(事故発生から約5時間後)
21時 官邸に政府対策本部設置。(事故発生から約10時間半後)
コンピューター西暦2000年問題 12月31日 18時 官邸対策室設置。
1月5日 12時 (解散)
 
平成12年
有珠山噴火 3月28日 14時45分 臨時火山情報出る
29日 10時15分 官邸連絡室設置
同日中に官邸対策室に格上げ
11時10分 緊急火山情報出る
31日 13時10分頃 噴火
伊豆諸島地震・三宅島雄山噴火 6月26日 19時33分 緊急火山情報出る
20時5分 官邸連絡室設置
7月30日 21時25分 (新島・神津島近海で地震発生)
21時35分 (官邸対策室設置。地震発生から10分後。)
8月18日 10時52分 (新島・神津島近海で地震発生)
11時5分 (官邸対策室設置。地震発生から10分後。)
17時2分 雄山噴火
9月1日   (三宅島の全島民島外避難)
東海地方豪雨 9月8日   豪雨降り始め
12日 5時30分 官邸連絡室設置。
鳥取県西部地震 10月6日 13時30分 地震発生
13時35分 官邸対策室設置。(地震発生から5分後)
17時30分 官邸連絡室に格下げ。(地震発生から約4時間後)
 
平成13年
平成13年芸予地震 3月24日 15時28分頃 地震発生
16時 官邸対策室設置。(地震発生から約30分後)
19時頃 官邸連絡室に格下げ。(地震発生から約3時間半後)
アメリカ同時多発テロ事件 9月11日 21時45分頃
(現地時間:
8時45分頃)
事件発生
(この後約2時間の間に都合4機の航空機が墜落、ないし建造物に突入)
22時35分 官邸連絡室設置。(事件発生から約1時間後)
12日 0時20分 官邸対策室に格上げ。(事件発生から約2時間半後)

 上の一覧表では官邸連絡室や官邸対策室といった単語が出て来ますが、これが官邸に設置された初期対応組織を指します。先にも触れた官邸危機管理センターに設立され、メンバーは基本的に内閣安全保障・危機管理室の要員、室長は内閣危機管理監になります。「連絡室」の段階では情報収集を行なうだけですが、「対策室」になると緊急参集チームも参加して、情報収集に加え関係省庁への対策活動指示も一部行なわれるようです。

 上の表で見てみると、阪神大震災の教訓に鑑みてといういうことか、さすがに地震に対する対応は早いです。遅くとも発生から30分で対応組織が立ち上がっているのはさすがと言うべきでしょう。同じ災害でも風水害になると、地震ほどではありません。地方自治体や担当省庁にに任せておいて大丈夫な部分も多いということか、実際に被害が出始めてから「連絡室」を設置する程度にとどまっています。

 

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