警察機関がいっぱい!

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 テレビ・ラジオ始め、私達はメディアの恩恵を大いに受けています。地球の裏側の出来事であっても、それが大事件なら次の日にはもう知っています。外国語が分からなくても大丈夫、ちゃんと日本語の解説やら字幕やら吹き替えやらが入ります。それに映像なら、百万の言葉よりもさらに分かりやすく事態を示してくれるでしょう。

 さて、外国で事故やら事件やらが起きた時、その報道の中で我々は出動した外国公的機関の名前や姿を見聞するんですけれど。報道の解説は、大概の場合彼らを「警察」や「軍隊」と称します。暴動なんかの場合では、「治安部隊」というのも出てきますね。ここでふと思うのは、彼らは本当に、いわゆる「警察」「軍隊」と呼ばれる存在なのだろうか? 本当は別な組織なのに報道する側が便宜上(あるいは誤解して)「警察」「軍隊」と呼んでいるだけなのでは?という疑問。

 いやだって、日本を見てみると、警察以外の捜査・調査期間やら実力機関はとてもたくさんあります。日本もそうだから外国もそう…… と一概には言えないでしょうけれども、でも実際問題外国においても「警察」「軍隊」以外の捜査・調査機関、実力機関というのは結構あるみたい。そもそも警察からして、その制度的内容はお国によりけりですしね。でもそういう違いが、報道からはなかなか読み取れません。

 具体例を挙げましょう。例えばアメリカ合衆国。アメリカの警察は、連邦政府と州以下の地方とでは全く違います。まず地方の都市部に市警察部、郡部に郡保安官事務所が行政区画に従い設置されており、区域内の犯罪捜査などに当たります。複数の警察間の調整やハイウェイ上などの広域犯罪取締に当たるのは州警察です。ところでアメリカの法律には各州議会が定めた州法と、連邦議会が定めた連邦法があります。通常犯罪捜査に当たるのは州以下の地方の警察ですが、連邦法違反事件など連邦犯罪となるものは、連邦政府にも捜査権が生じます。これを捜査するのが連邦捜査局、FBIです。いやぁ、メンドいですね!

 さらに。FBIは連邦政府の司法省に属する半独立の警察機関ですが、連邦法執行機関はなにもFBIだけではありません。司法省にはFBI以外に幾つもの機関があり、財務省、国防総省、国務省、新設ほやほやの国土安全保障省にもあります。また、行政府ではなく立法府ですが、議会にも警察(Capitol Police)があります。加えて、2001年9月の同時多発テロを受けた国土安全保障省の新設に伴い、法執行機関の移動・再編がなされ、ただでさえ分かりにくかった(^^;;)機関のあり方が益々訳わかんなくなってしまいました。

 とりあえず、把握できている部分だけでもざざっと挙げてみましょう。

同時多発テロ以前現在(2004年6月)
  • 司法省
    • 連邦捜査局 (FBI)
    • 麻薬取締局 (DEA)
    • 執行官局 (連邦保安官 U.S. Marshals Service)
    • 移民帰化局 (INS)
  • 財務省
    • シークレットサービス (Secret Service)
    • アルコール・タバコ・火器局 (ATF)
    • 国税局 (内国歳入庁 IRS)
    • 関税局 (税関 U.S. Custom Service)
  • 国務省
    • 外交保安局および外交保安部 (DS / Diplomatic Security Service)
  • 運輸省
    • コーストガード (沿岸警備隊 U.S. Coast Guard)
  • 国防総省
    • 陸軍犯罪調査部 (CID)
    • 海軍犯罪調査部 (NCIS)
    • 空軍犯罪調査部
  • 郵政公社
    • 郵政捜査部
  • 司法省
    • 連邦捜査局 (FBI)
    • 麻薬取締局 (DEA)
    • 執行官局 (連邦保安官 U.S. Marshals Service)
    • アルコール・タバコ・火器局 (ATF)
  • 財務省
    • 国税局 (内国歳入庁 IRS)
  • 国土安全保障省
    • シークレットサービス (Secret Service)
    • コーストガード (沿岸警備隊 U.S. Coast Guard)
    • 入国・税関執行部 (ICE)
  • 国務省
    • 外交保安局および外交保安部 (DS / Diplomatic Security Service)
  • 国防総省
    • 陸軍犯罪調査部 (CID)
    • 海軍犯罪調査部 (NCIS)
    • 空軍犯罪調査部
  • 郵政公社
    • 郵政捜査部

ざっと挙げてみるとこのくらい。同時多発テロ・国土安全保障省設置で法執行機関の何が変わったかというと、シークレットサービスとコーストガードが新設省に編入、あとATFが司法省に移った、税関とINSが消えた、という辺り。しかし税関とINSは、別に消滅した訳ではなく、機能別に分割されて国土安全保障省の各部門に再配置されています。一覧中で挙げたICEもその一つです。

 ちなみに。ICEは、密入国・密輸の捜査・摘発、全国的な監視活動に当たる機関という位置付けです。Special Agentと呼ばれる連邦捜査官がおり、旧税関・INS譲りの特殊部隊や航空・船舶部隊がいるのもここ。あと、連邦航空保安官(Federal Air Marshal / FAM)もいます。ところで旧税関・INSの機能を受け継いだ機関としては、もう一つ、同省の税関・国境防護部(CBP)があり、こちらは国境線・空港・海港での検査・監視活動に従事します。貨物の通関や入国者チェックの他、国境線警備という事で旧INSのBorder Patrolもここが引き継いでいます。言うなれば、水際防御部門。武装はしているものの、法執行機関ではないので捜査官はいないらしい。

 連邦政府だけとってみてもこういう状態です。でも実際は、上に挙げた他に把握できてない機関がまだまだたくさんあるみたいです。又、こういった警察以外の法執行機関は州レベルでも設置されているようですが、そちらにはとても手が回りません。いやはや。

 視点を転じて、軍隊という観点から見てみますと、まず連邦軍があります。コーストガードも軍事機関です。各州は独自の軍隊として州兵(National Guard)・州航空隊(Air National Guard)を持っています。州兵・州航空隊とコーストガードは、有事の際や訓練の際、連邦軍の指揮下に入ります。また州航空隊は平時の合衆国本土防空の任務も負っています。このように、軍隊といってもその内実は決して一様ではありません。

 アメリカの他にも、例えばロシアでは、制度的な内容は分かりませんがいわゆる警察があり、その他の取締機関として税関・税金警察・連邦保安庁(FSB)・連邦警護庁(FSO)・連邦国境警備庁(FPS)などがあり、又国防軍の他に内務省軍(MVD)、FPS所属の国境警備隊という軍事機関があります。

 ドイツでは、こちらも制度的内容は分かりませんが、州レベルでいわゆる警察があります。連邦レベルでは連邦刑事局(BKA)があります。その他に取締機関として財務省の税関(税関刑事局 / ZKA)、内務省の連邦国境警備隊(BGS)、連邦憲法擁護庁(BfV)などがあります。

 フランスでは、国家警察本部を頂点に、各地区に地方警察・都市警察が組織されています。有名なパリ警視庁も都市警察の一つです。警察は任務と権限の異なる幾つかのセクションに分かれています。犯罪を捜査する司法警察、警備実施や防犯といった行政的活動分野を担当する保安警察(BSP)、共和国警備隊(CRS)、国内諜報担当で半独立機関の国土監視局(DST)などです。警察の他には、税関・国家憲兵隊(GN)・大統領府護衛隊などが取締機関として存在します。

 又、フランスの司法制度は日本やアメリカなどとは一風変わっており、予審という制度を採用しています。この制度では、逮捕・捜索といった強制捜査権を行使できるのは原則として予審判事と、予審判事の委任を受けた上級司法警察官だけです。任意に渡る捜査や、現場における制止・警告・鎮圧活動に現場鑑識といった事実行為、それに現行犯逮捕は委任を受けていない司法警察官や一般の警察官でもできますが、強制捜査はだめ。強制捜査権は、真実発見のための裁判所が手にする権限であるというのが原則です。

 このように、警察捜査に抑制的なのがフランス予審制度の特徴です。が、現行犯逮捕及び任意に渡る行為は可能なのと、予審判事の委任があれば上級司法警察官が強制力を行使できるので、実際には警察に強制捜査権があるのとあまり違わない状況のようでもあります。

 以上書いてきたように、「警察」「軍隊」といってもその内容は一様ではなく、又警察以外の取締機関・実力機関は権限も任務内容も多種多様です。どんなのがあってどうなっているか、先進諸国の機関でもなかなか分かりません。ましてアジア・アフリカ・中南米諸国ともなると、情報らしい情報すら入ってこない始末です。

 そこで。もし報道した事件やらでそういうちょっと特殊な機関が出動していた事が分かったら、その辺きちんと解説付きで報道してもらえるとすごく嬉しいなー… と思ったりもする訳です。はい。警察・法執行機関を特集組んで報道解説してもらえると文句なしだけど、そこまでは要求しません。酷だから(笑)。あーでもせめて、警察はこんな具合になってます位の簡単な説明は欲しいかな。国家警察だか内務省だかが全部取り仕切ってるのか各州独立なのか、とか。そういった基本事項さえ分からない事も多いですもん。

 え、そんな事知ってどうする、って? どうもしませんよ。でも気になってしょうがないんです(笑)。同じヤク中がパクられるのでも、警察がしょっぴくのと厚生省がしょっぴくのとでは大きな違いがあるんです、私にとって。マニアというのは、そういう細かいところにこだわりを見せるものなんですから。(笑)

 以上、ぽん君のメディア・報道に対する無茶な要求でしたっつ!

 

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